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犬走り

犬走りは「ドッグラン」ではなく建築用語
「犬走り」と聞くと、「ドッグランのこと?」と勘違いする方がいるかもしれませんが、これは建築用語。日本では古くからある建築技法の1つです。
犬走りとは、住宅などに隣接ある「犬が通れるぐらいの細い道、平面」のことです。例えば垣(家や庭園などの外側の囲い。かきね)と溝の間や土手の斜面にコンクリートが施工されていたり、砂利が敷き詰められていたりはしないでしょうか。これが犬走りで、名前の由来には「犬が走って足跡が付いた道のこと」など、諸説あるようです。確かに工事現場で犬の足跡を見かけることもありますね(猫の場合もありますが)。
犬走りには、実は幅に正確な決まりはありません。さらに住宅だけでなく、城郭や土手・堤防、線路や築地(埋立地)にも犬走りが存在します。例えば城郭の犬走りは整備スペースや崩落防止の役割を果たしてきました。土手・堤防の犬走りは監視員の歩行路にもなりますし、線路の場合は保線作業員などの通路として活用されています。
では、住宅などを取り巻く犬走りは何のために作られるのでしょうか。実は、昔の日本建築には雨樋がありませんでした。そのため、屋根から雨水はそのまま落ち、地面で弾けた水滴や泥は住宅などの壁に付着して汚れの原因になります。水や泥は美観を悪化させ、時には基礎部分を腐らせることもありました。そこで砂利やコンクリートを施工することで水跳ねや泥跳ねを防ぐようにしたのです。砂利の場合は上を歩くと音がするので防犯効果もありますし、犬走りには虫が入りにくくなるメリットもあります。また、コンクリートの場合は平坦なので、高齢者でも安心しして移動することができます。
ただし、しっかり施工しないと雑草が生えたり、水はけが悪くなります。また、コンクリートがひび割れるとシロアリが侵入してきたりするので、DIYをする際は細心の注意が必要です。
ちなみに犬走りには決まった幅はないのですが、水跳ねなどを考慮すると40~60cmの幅が適当だと言われています。コンクリートの場合は一度施行すると後で調整しづらくなることもあり得ます。
犬走りはいずれなくなる?
様々なメリットのある犬走りですが、最近では雨樋だけでなく壁面のコーティングの技術も進歩したため、不要になりつつあるとも言われています。実際に施工されていない物件も増えており、施工されていても「何かの時に役に立つこともある通路」ぐらいにしか思われていないかもしれません。