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役務提供型契約

労働サービスの提供に関する契約
「役務提供型契約」とは、売買、賃貸借と並ぶ重要な契約類型の1つで、私法(市民相互の関係を規律付ける法)に含まれる概念です。何だか難しそうな言葉ですが、これは役務=労働サービスの提供に関する契約のこと。民法で言えば次のような契約が「役務提供型契約」です。

・雇用契約
・請負契約
・委任契約
・寄託契約
・不動産取引の仲介(媒介)契約
・商法上の仲立契約
・問屋契約
・運送契約等々

なお、民法ではほかにも大きく分けて4つの契約類型があります。

①役務提供型契約
②移転型契約
③利用型契約
④知的財産型契約
⑤和解型契約

②には売買契約や贈与契約等が含まれます。「移転型」と呼ばれるのは、財産権の移転を目的とする契約だからです。
③には賃貸借契約、消費貸借契約等が含まれます。例えば「部屋を貸して収益を上げる」など、何らかの物の利用を目的とする契約です。
④は契約の目的となっている財産権に特別の配慮が必要なものです。例えば秘密保持義務、使用できる知的財産の範囲などの契約条項が含まれます。
⑤は「示談」とも言います。新たな権利・義務関係を作り出すのではなく、すでに発生している権利・義務の範囲を確立させます。
様々な役務提供型契約
役務提供型契約は広い意味で役務(労務)の提供を目的とする契約です。そのため様々な留意が必要になります。

・労働基準法や派遣法などとの関係についての留意
・業務を明確化すること
・下請けなどの可否
・瑕疵担保責任の範囲と内容の明確化
・危険負担を明確化すること
・契約解除事由と解除後の所有権などの処理の仕方
・雇用における秘密保持義務や競業禁止の定め等々

このため、次のような懸念があります。

・民法で規定されている契約(典型契約)の既定によっては十分に対応できないのではないか
・当事者間の交渉力等の違いによって利益を害することのないように配慮する必要があるのではないか等々

つまり、例えば民法が想定していなかった新しい契約が登場したりすると、典型契約の範疇を超えるため、民法はこれらの契約をカバーできないのではないか、といった問題があるのです。
また、派遣契約に関しては途中で契約を打ち切られたり、契約が更新されなかったりする派遣切り(雇い止め)などの問題があります。
このため「役務提供型契約の共通ルールを定める必要があるのではないか」といった議論もなされているそうです。