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青色事業専従者給与

家族に対する報酬を控除する
確定申告は「白色申告」「青色申告(最大65万円控除)」「青色申告(最大10万円控除)」に大別されます。不動産経営を行う人にとっては65万円控除の青色申告が一番有利なのですが、不動産経営の事業的規模はおおむね10室以上、一戸建てなら5棟以上とされています。もっとも、「青色申告(最大10万円控除)」であれば事業的規模は求められませんし、収益規模が大きかったり、他の不動産収入を合算したりすれば事業的規模と見なされるケースもあります。
青色申告を行う個人事業主になれば、誰でも節税のことを考えるでしょう。もし事業を手伝ってくれる家族がいれば、その家族に対する報酬を控除することができます。これを「青色事業専従者給与」と呼びます。
上限設定がない専従者給与
白色申告で事業専従者控除を受ける場合、配偶者80万円、その他の親族は50万円と決められています。しかし、青色申告の場合は金額が上限設定がありません。また、人数の上限も決められていません。
青色事業専従者として専従者給与を控除するには3つの条件をクリアする必要があります。
  • 青色申告者と生計を同一にする親族であること
  • 当該年度の12月31日に15歳以上であること
  • 青色申告者の事業に6カ月を超える期間専従していること
「専従者」でなければならないので、学業が本分である学生は青色事業専従者にはなれません。また、副業として定期的にアルバイトやパートをしている場合もNGです。ただし、単発の派遣の仕事を年に数回行った程度であれば専従者として認められる可能性があります。要は「青色申告者の業務に専従できる状態であったかどうか」が判断基準となるのです。
一番節税効果が高いポイントを探す
青色事業専従者給与には上限設定がありませんが、一般的には10万円以下に抑えるのが良いとされています(専門性のある仕事は別)。青色事業専従者給与も源泉徴収の対象となりますが、88,000円未満であれば源泉徴収の必要はありません。
青色事業専従者給与控除の対象者は配偶者控除や扶養控除の対象ではなくなります。例えば配偶者控除は38万円なので、それよりも金額が低い場合は配偶者控除を使った方が節税効果は高くなります。要は青色事業専従者給与を配偶者控除などより高額にすれば良いのですが、高くし過ぎると税務署から問い合わせを受ける場合があります。青色申告者本人の収入とのバランスを考慮しましょう。
青色事業専従者給与の収入の多寡によって住民税、所得税、個人事業税などの扱いも変化します。青色事業専従者が支払うことになる税金と青色申告者が減らせる税金を比較・検討することが必要です。
青色申告のメリット
会社員であれば、あまり確定申告を意識することはありません。各種控除については会社が年末調整で処理してくれるからです。しかし、個人事業主になると話は変わってきます。確定申告を自分でしなければなりませんし、青色申告を選択すれば複式簿記に対応しなければなりません(最近ではクラウドサービスなどで比較的簡単に帳簿を付け、確定申告書類を作ることもできるようになっています)。
個人事業主は、基本的に給与ではなく収入から必要経費を引いて事業所得が決まります。従業員を雇っていれば、その給与も経費にすることができます。個人事業主には会社員にはない手間が付きまといますが、青色申告の65万円特別控除を受けられるなどのメリットがあります。青色事業専従者給与もメリットの一つです。
家族への報酬が経費として認められる場合とは
個人事業主が不動産経営に乗り出したりすると、家族に手伝ってもらって報酬を支払うこともあるでしょうが、これは原則として経費として認められません。しかし、以下のような場合は全額経費として認められます。

① 別生計の家族従業員への支払い
② 同一生計の家族のうち、事業専従者に対する支払い

「別生計」とは、事業主と別に住んでいる、財布が別である等の条件を満たす場合。そして②が「青色事業専従者」です。
事業専従者は次の要件を満たし、税務署に申請書・届出書を提出する必要があります。

・同一生計の配偶者や親族であること
・その年の12月31日時点で15歳以上であること
・その個人事業主の事業を年間6ヵ月以上手伝っていること

青色事業専従者として認められれば、個人事業主に集中する所得を分散することで節税でき、さらに報酬を受け取る家族従業員は給与所得控除が受けられます。家族に対して不自然に高額な報酬を支払っていると税務署から疑われかねませんが、常識的な範囲であれば節税に大きな効果をもたらすと言えるでしょう。
ただし、青色事業専従者には配偶者控除、扶養控除が受けられなくなるというデメリットもあります。事業専従者を選ぶか控除を選ぶか、青色事業専従者を申請する前に一度シミュレーションをしてみると良いでしょう。
なお、白色申告においても専従者控除という制度があり、一定額(配偶者で86万円、その他の親族は50万円)の控除を受けられます。ただし青色と同様に配偶者控除、扶養控除は受けられなくなるので、節税メリットを見極める必要があります。