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住宅セーフティーネット

住宅セーフティネットとは、自らの力で住宅を確保することが困難な人が、それぞれの所得や家族構成、身体状況などに適した住宅を確保できるようにする支援の仕組みのことをいいます。

住宅セーフティネットが活用される世帯類型
自らの力で住宅を確保することが困難な人とは、たとえば高齢者、障害者、外国人、子育て世帯、母子世帯、ドメスティックバイオレンス被害者、犯罪被害者、ホームレス、被生活保護者などが含まれます。
支援の仕組み
住宅セーフティネットの仕組みを大きく分けると、「生活に適した住宅の取得・改修・住替えの支援」「民間賃貸住宅に入居しやすい環境の整備」「公共賃貸住宅における暮らしやすい環境の整備」となります。
支援の内容
「生活に適した住宅の取得・改修・住替えの支援」として、次のような支援があります。
  • バリアフリー住宅を建設したり購入したりする際の住宅ローンの金利の優遇
  • バリアフリー改修資金などについて、死亡時に住宅資産などを処分して元金を一括返済できる死亡時一括償還型融資
  • 住宅ローンの債務保証
  • 自宅のバリアフリー工事を行った場合に、所得税と固定資産税の税額が軽減される改修優遇税制
  • 移住・住みかえ支援機構が、50歳以上の高齢者のマイホームを借り上げて、子育て世帯などに転貸するマイホーム借上げ制度
「民間賃貸住宅に入居しやすい環境の整備」としては、次のような支援があります。
  • 高齢者の入居を拒否しない民間賃貸住宅の情報を提供する高齢者円滑入居賃貸住宅制度
  • 高齢者だけが入居できる高齢者民間賃貸住宅の情報を提供する高齢者専用賃貸住宅制度
  • 高齢者や障害者、外国人、子育て世帯の入居を受け入れる民間賃貸住宅の情報を提供するあんしん賃貸支援事業
  • 地方公共団体や独立行政法人都市再生機構、民間住宅事業者などが、高齢者や障害者などのための優良な賃貸住宅の整備をする際に活用できる国の助成制度
  • 保証人がいない高齢者や障害者などに対しての家賃債務保証制度
  • 高齢者が生涯にわたって住み続け、死亡したときに契約が満了する終身建物賃貸借契約
「公共賃貸住宅における暮らしやすい環境の整備」としては、次のような支援があります。
  • 公共賃貸住宅のバリアフリー化
  • 公営住宅の入居に対しての条件を、高齢者や障害者などについては一般よりも緩和して入居しやすくする環境整備
  • 公共賃貸住宅団地で、高齢者福祉施設の一体的整備や生活援助員の配備など、福祉環境の整備
民間住宅活用型住宅セーフティネット整備推進事業
民間住宅活用型住宅セーフティネット整備推進事業とは、既存の民間賃貸住宅の質の向上や空家の有効活用をすることにより、自ら住宅を確保することが困難な人の安定的な確保、また災害時に公的に利用できる環境構築のため、空家のある賃貸住宅をリフォームする際に、費用の一部を国が補助する事業のことをいいます。
(出典:国土交通省)

「ハウジングプア」と住宅セーフティネット

拡大する「住まいの貧困」
賃貸住宅市場で住宅の確保に困難を抱えている人達のことを「住宅確保要配慮者」と位置付け、これを支援する仕組みのことを住宅セーフティネットと言います。また、住まいを確保できない労働者のことを「ハウジングプア」と呼びます。最低賃金のために生活保護水準以下の収入しか得られない人々のことをワーキングプア(働く貧困層)と呼びますが、ハウジングプアは派遣切りなどに遭って突然収入が途絶え社員寮や社宅を追い出された人達のことで、いわゆる「ネットカフェ難民」を生み出す原因にもなっていると言います。さらにハウジングプアは、住まいに困難を抱えている人達全体の問題を指す言葉として「住まいの貧困」と呼ばれることもあります。近年では非正規雇用の若者などが住まいの貧困に陥ることが増えています。
三層に分かれる「ハウジングプア」
一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事の稲葉剛氏によると、広義のハウジングプアで最初の段階は「家はあるが、居住権が侵害されやすい状態」。社員寮や社宅、脱法ハウス(貸倉庫や貸事務所として届けられているシェアハウス)などに住んでいる状態がこれに当たります。脱法ハウスは窓や防火器具もない施設が多いので安全面からも問題視されていますが、若年貧困層の受け皿になっている側面もあり、摘発を強化すると次に述べる「屋根はあるが家がない状態」に陥ってしまう懸念もあります。
「屋根はあるが家がない状態」は、ネットカフェ、ドヤ、サウナ、施設、病院、友人宅などに身を寄せているということ。お金がショートしたり友人の都合が悪くなったりすれば途端に宿無しになってしまいます。
最後に行き着くのは「屋根がない状態」。ここまで来ると路上、公園、川敷などで暮らすことになります。
狭義のハウジングプアは労働者ですが、広義のハウジングプアには住宅確保要配慮者と同じように高齢者、障害者、子育て世代などまで含まれます。
なかなか見えない解消への道
住宅セーフティネットは大きく分けると「生活に適した住宅の取得・改修・住み替えの支援」「民間賃貸住宅に入居しやすい環境の整備」「公共賃貸住宅のにおける暮らしやすい環境の整備」が柱となっています。増える空き家を登録住宅として貸し出したり、ホームレスの仕事確保や住宅入居などを支援する「ホームレス自立支援法」の期限が10年間延長される(元々は2017年8月が期限でした)など、地道な取り組みが続いていますが、ハウジングプアの全体像が掴めておらず、増える貧困層に対処しきれていないのが現状です。