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時価会計

「取得原価主義」の問題点
日本の会計基準は長く「取得原価主義」を採用してきました。取得原価主義とは、すべての資産を取得時点の価値(簿価)を原価として評価する会計制度。この手法は分配可能利益の算定に適しているため重宝されていたのですが、一方で取得価額と時価とが大きく乖離すると正確な財政状態が判断しづらいという指摘がありました。さらにグローバル化の進行によって国際財務報告基準(IFRS)と整合性を持つ会計基準の採用が急速に求められるようになり(会計基準の国際的コンバージェンス、収斂、共通化)、結果、企業会計においては不動産の時価評価(あるいは時価を注記によって開示する)を行うようになっています。以前取り上げた「減損会計」でも不動産鑑定評価は活用されています。
変動する資産を評価する
時価会計とは賃借対照表の資産と負債の時価を定期的に再評価する会計制度のことです。簡単に言えば、株式のように「確認した日の価格が時価となる」のが時価会計です。不動産情報サイト「アットホーム」によると、時価評価の一般的な方法は以下のとおりです。
  1. 資産から得られるであろう収益を算定する方法(この方法によって算定した価額が帳簿価額を下回る場合に、その損失を帳簿価額に反映する手続きが減損会計である)
  2. 現時点での取引価格で算定する方法(この方法で算定した結果生じる資産価額減を、損失として計上する手続きが時価会計である)
※企業が保有する不動産については、原則として①の方法で評価し、減損会計が適用される。
時価評価のメリット・デメリット
時価評価のメリットは、その時点での資産を正しく評価できること。金融商品などは市場の動向によって価値が変動します。株式、不動産などを時価で評価することは普通ですし、M&Aや事業承継などの場面でも活用できます。不動産の含み益、含み損が開示されれば、財務等の透明化に貢献できます。
一方、時価評価のデメリットは、企業経営が不動産価格の変動に左右されたり、評価が恣意的になる可能性があるということです。時価評価はタイミングによってある程度操作することができますし、未上場の中小企業では事業承継や節税のために株価を圧縮する手法が普通に行われています。やり過ぎると株主が損失を受けたりする可能性があります。
そもそも事業資産のように投資額が取得原価として確定しているものを評価する場合、価格の変動を前提とする時価評価は不向きです。時価評価の広がりは世界的な趨勢ではありますが、有効性はケースバイケースであることにも留意した方が良いでしょう。