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貫(かん)

貫(かん)と言えば、「寿司1貫」を思い浮かべる人が多いでしょうか。この言葉、由来はよくわかっておらず、1貫はもともとにぎり寿司1個を指す言葉だったのが、同じ寿司ダネを2個ずつ握ってくれることがあるので、特に西日本では「1貫=2個」だと考える人も多いのだとか(参考:Webサイト「NHK放送文化研究所」にぎりずし「1カン」?)。

この「貫」、江戸時代には銭高の単位でした(貫文)。さらにそれ以前より、尺貫法(しゃっかんほう)でも「かん」は用いられてきました。貫は重さの単位で、明治時代の度量衡法(1891年)以降は1貫=4分の15gとされました。ちなみに面積を表す「坪」も尺貫法の単位の1つ。他にも木造住宅においては畳の長手方向の長さを「間(けん)」と言ったり、屋根勾配などを表す際に「寸」という単位を使ったりすることがあります。

「ぬき」という部材
「貫」という言葉には「ぬき」という読み方もあります。「ぬき」と読む場合は、木造建築において「柱等の垂直材の間に通す水平材」「柱を貫いて柱と柱を結びつける部材」を意味します。古い木造建築に用いられる柱や梁などが表面に見える壁のことを真壁(しんかべ)と言い、柱などが見えないように壁を柱の外で仕上げる壁を大壁と呼びますが、貫は主に真壁で用いられます。貫は胴貫(胴縁、どうぶち)とも呼ばれ、壁の下地にもなります。木造軸組工法においては杉材が使われることが多いそうです。
水平材を構造材として用い、柱を貫通させて楔(くさび)で固定して建物を支える構造のことを「貫構造(通し貫)」と呼びます。寺院や町屋、民家などに使われた構造で、現在ではあまり見られなくなりましたが、あえて採用している家屋もあるようです。
地震の時はあえて揺れる構造
貫構造では、最も上部の貫は天井貫と呼ばれ、上から順に内法貫、腰貫、地貫と名前が付いています(寺院建築では特殊な貫も存在します)。木造住宅と言えば木造軸組工法が有名ですが、木造軸組工法では筋交いなどを入れて壁を補強します。これに対し、貫構造は木造軸組工法をラーメン構造(ラーメンはドイツ語で額縁のこと)にする工法とも言えます。ただし、木を組み合わせても剛構造にはならず、貫構造はむしろ少し揺れることで地震による水平移動を吸収するようになっているのだとか。構造上、壁の散り(ここでは柱との段差のこと)が切れることは避けられなかったので、定期的に左官による補修が必要なのだそうです。
(参考:Webサイト「建築用語集」タクミホームズ提供)