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ピロティー

柱だけで構成された建築スタイル
大きな建物には「ピロティー」と呼ばれる空間が設けられている場合があります。ピロティーとはフランス語で「杭」の意味。建築用語では壁がなく、柱だけで構成された建築スタイルのことです。具体的には1階部分の一部にあって2階部分を柱だけで支えている空間のことを指します。「吹きさらしの空間」と形容されることもあり、1階部分は自由に通り抜けることができます。
特にマンションやオフィスビルではピロティーが多用されています。作業場や駐車スペースとして利用しやすいからです。一戸建て住宅でも、1階部分をピロティーにして駐車スペースを設けることがあります。2階部分を1階部分より大きくすれば容易にピロティーを確保することができます。
耐震面では不安も
ピロティー部分は雨が降っても大丈夫なので、作業場や駐車場などとして大変有用です。ただし、剛性(変形のしにくさ)については不安もあります。ピロティーの柱の上部に耐震壁があったり、コンクリートの壁が多く配置されている場合、ピロティーの剛性は上部と比較して大変低くなります。阪神大震災の時にはピロティーが潰れ、2階が地上に落下しているケースも見られたそうです。ちなみにピロティーの上部構造がほとんど柱と梁で構成されていて(例えば窓だらけの建物)、耐震壁が極端に少ない建物も存在します。こういった建物はピロティーと呼ばれません。耐震壁などが少ない建物の場合は大地震の際に変形することをある程度許容した設計になっていると考えられます。
昭和56年に建築基準法は改正されており、「震度6強~7の大地震では倒壊しないこと」が耐震基準になりました(新耐震基準)。しかし実際には平成28年の熊本地震でもピロティー構造の建物の倒壊が確認されています。
様々な耐震補強工事がある
大地震が起こって敷地外へ避難する際、経路がピロティーを通過している場合もあります。避難経路の安全性を確保するには、ピロティーの耐震性を確保しなければなりません。もちろん設計段階から十分な対策を取って建てられた建物であれば安心ですし、ピロティーの強度と剛性を大幅に改善する耐震補強工法も開発されています。ピロティーの耐震補強工法としては、柱の表面にアラミドシートや鋼板、ポリエステルなどを貼り付けて強度を上げる工法、梁と柱の接合部にハンチを取り付ける工法などがあります。