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DCF法

不動産鑑定でも使われる価値評価法
DCF法は企業価値評価法の一つ。DCFは「Discount Cash Flow」の略で、「割引キャッシュフロー法」と呼ばれることもあります。DCF法はやや複雑な計算式を用いて計算するのですが、考え方自体はシンプルで、最後は金額の形で算出されます(ただし算出されるのはあくまで「価値」であって「価格」ではありません)。また、DCF法は不動産鑑定でも使われる評価法となっています。
まず、企業価値の算出方法は以下のとおりです。

・企業価値 = 企業が生み出すフリーキャッシュフローの期待値を加重平均資本コスト(WACC)で割り引いた現在価値

フリーキャッシュフローとは、事業によって稼いだ純収入から、事業を維持・成長させるための投資支出を差し引いた金額のこと。キャッシュフローとは入ってくるお金から出ていくお金を差し引いたものですが、DCF法では「将来得られるキャッシュフローの現在の価値の合計」によって価値が決まると考えます。
・フリーキャッシュフロー = 営業利益 × (1-法人税率) + 減価償却費 - 運転資本増加額 - 設備投資額

ここで言うフリーキャッシュフローは債権者と株主に分配可能なキャッシュフローを意味しており、事業全体のキャッシュフローを計算するため支払利息は差し引かないなどの特徴があります。
「加重平均資本コスト」で企業価値を割り出す
次に割り引く率ですが、これは将来発生が見込まれるキャッシュフローを現在の価値に割り引くためのものです。この割引率には加重平均資本コスト(WACC)という数値を使います。DCF法による企業価値の算出方法は次のようになります。

・フリーキャッシュフローが一定(ゼロ成長)の場合
企業価値 = フリーキャッシュフロー ÷ 加重平均資本コスト

・フリーキャッシュフローが定率成長の場合
企業価値 = フリーキャッシュフロー ÷(加重平均資本コスト - フリーキャッシュフロー成長率)
不動産鑑定では「将来の収益を織り込んだ物件評価」が可能に
不動産評価では収益還元法、原価法、取引事例比較法という3つの方法が主に用いられますが、DCF法は収益還元法の1種になります。
不動産鑑定の場合は資産を考える際に「時間価値」を考慮します。例えば今持っている100万円と1年後に手に入る100万円では、今運用できる100万円の方が価値が高いと考えます。このためDCF法では時間が経過するごとに時間価値の分だけ将来受け取る価値が割り引かれると考え、計算に組み入れて不動産価格を評価します。

・不動産の収益価格の計算式
不動産の収益価格 = 年間収益 ÷(1+割引率)+年間収益 ÷(1+割引率)の2乗+…+年間収益 ÷(1+割引率)のn乗+物件保有終了時の不動産売却価格 ÷(1+割引率)のn乗

nには物件保有年数が入ります。不動産の場合の割引率は類似不動産の事例や他の金融資産の利回りを参考にすることが一般的です(国土交通省からは物件の立地条件などから求めるという指針が示されています)。
DCF法は未来におけるリスクを考慮に入れて物件を評価できるので、優良物件を探すのにも使えます。ただし、一般の不動産投資家がDCF法を完璧にマスターする必要はありませんし、割引率は仮定の数字です。一方で、最近では簡単にDCF法によるシミュレーションができるサイトもあります。金融機関ではDCF法が用いられているので、評価方法の一つとしてどんな考え方で計算するものなのか知っておくと良いでしょう。