オリジネーター(originatar)とは、一義的には「考案者」「創始者」を意味する言葉です。音楽やファッションなどの分野では「○○ミュージックのオリジネーター」「○○ファッションのオリジネーター」といった表現が使われることがあります。
このオリジネーター、不動産用語になると「資産流動化が行われるときに証券化の対象となる資産を保有している企業」という意味になります。一連の動きの起点(オリジン、origin)になる存在なのでオリジネーター(原所有者)と呼ぶわけです。
- 自社ビルは得か損か
- しかし、そもそもなぜ資産を流動化するのでしょうか。例えば、自社ビルを持っていると何かと便利です。当然ながら自由度は高くなりますし、「自社ビルを所有している」というだけで取引先から信用されたり、会社としての「格」を上げることにも貢献します。不動産を担保にすれば、借入金を取得することも可能でしょう。
ただし、自社ビル所有にはデメリットもあります。まず、当然ながら初期投資のコストがかかりますし、新築ならば建設には時間も労力もかかります。固定資産税等の維持費もかかる上、バランスシート(賃貸貸借表)で資産が肥大化することにもなります。
このように両者を比較して自社ビル所有のデメリットの方が大きい場合、自社ビルを手放す、あるいは所有せずにテナントとして入居した方が良い、という選択肢が生まれます。テナントであれば初期投資は少なくて済みますし、管理業務は管理会社に任せることができ、引っ越しも比較的容易になるからです。しかし、すでに所有している物件が高額なために思うように売れないこともあります(つまり、流動性が低いということです)。このような場合には不動産の証券化(資産流動化)という手段が取られる場合があります。 - 不動産証券化の仕組み
- 不動産を証券化する場合は、単純に不動産を売却するわけではありません。以下、基本的な不動産証券化の流れを説明します。まず、オリジネーターとなる企業は特定目的会社を設立します。この会社は資産を保有するための器の役割を果たします。特定目的会社は、不動産(ここでは自社ビルとします)をオリジネーターに貸し出す契約を結び、賃料を得ます。次に、賃料を担保として株式や債券などを発行し、投資家などから資金を募ります。この収入で会社を維持し、投資家などには配当を出します。さらに、特別目的会社は得た資金で自社ビルを買い取り、オリジネーターと自社ビルを切り離すのです。
オリジネーターは不動産資産を売ることで収入を得られ、バランスシートをスリム化できます(オフバランス化)。不動産を賃貸することで、それまでの事業を継続したまま経営の効率化が図れます。証券化の場合は物件の一部だけを売却することもでき、オリジネーターにとっては柔軟な活用が可能になるメリットもあります。
ちなみに証券化された不動産を投資しやすいように整備したものがREITになります。
(参考:Webサイト「不動産投資の教科書」「株の学校」)