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囲障の設置

隣の家との間に塀などを設置する権利
家や建物が隣接するときは、間に塀や柵があるのが一般的です。民法では境界に囲障(通行を妨げる構築物)を設置する権利を定めており「囲障設置権」と呼ばれています(民法225条)。
原則としては、自分の土地は自分が好きに利用できるけれども、隣の土地には手出しできないのが所有権というもの。しかし不動産が隣接していれば、どちらかの土地の利用法が他の土地に深刻な影響を及ぼすこともあります。こういった所有権の対立を調整する関係を「相隣関係」と読んでいます。
囲障設置権は相隣関係の一つで、基本的には隣の許可がなくても境界に塀などを設置することができます。しかし、費用は原則として相隣者が等しい割合で負担する(折半する)ことになっているため、囲障の種類、高さ、費用などは協議によって決めるのが望ましいとされています。勝手に塀を設置して後から費用を請求すると拒絶されることもあり、協議がまとまらない場合は裁判で設置を認めてもらう必要が出て来ることもあります。意見が一致しない場合は、板塀や竹垣その他これらに類するもので、高さは2メートルのものを設置すると規定されています(異なる慣習などがある場合はそれに準じます)。独断で囲障を設置した場合は、全費用を設置者の負担にすべきとの考え方もあるそうなので、注意が必要です。 ちなみに以上の話はあくまで「境界」に囲障を設置する際に考慮すべきこと。自分の敷地の内部に自分の費用で塀などを設置する場合は隣の承諾は不要です。
また、囲障設置権はプライバシー保護等を目的としているので、嫌がらせ等の目的で囲障を設置しようとしても、他の相隣者に協力義務はありません。
様々な相隣関係
「お隣さんとの関係」を規定する相隣関係には、他にも様々なものがあります。いずれも民法に規定されています。

・隣地使用権(209条)
・囲繞地通行権(210条~213条)※囲繞地(いにょうち)=袋地を取り囲んでいる土地
・水流に関する権利(215条~222条)
・囲障境界設置権(223条~232条)
・竹木切除権(233条)
・境界線隣接地帯に関する権利(234条~238条)
相隣関係と公共の福祉
相隣関係は憲法の「公共の福祉」によって一定の制約を受けるということを規定した一例と言えます。公共の福祉とは、社会全体の共通の利益を追求するために「他の人の人権との衝突を調整するための原理」のこと。日本国憲法は基本的人権を保障していますが、ある人が権利を主張すると他の誰かの権利を奪ってしまうこともあります(権利の濫用)。そうならないために社会全体が良くなる(=公共の福祉)ように権利を利用する責任がある、というのが公共の福祉の考え方です。