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意思無能力者

意思能力がない人を認定する「制限行為能力者制度」
意思無能力者とは、意思能力のない者のことです。具体的には、幼児や心神喪失者などがこれに当たります。意思無能力者による法律行為は無効とされています。泥酔していたり薬物を服用していた人なども意思無能力者に当たることがありますので、「あの不動産契約は意思能力のない状態で結んだものだ、無効にしてくれ!」ということも起こり得ます。
しかし、「意思能力がなかった」ということを証明するのはなかなかに困難なことです。契約を無効にしてほしい側が訴えた場合、意思無能力を証明する責任は無効を訴えた側にありますが、例えば泥酔していた人が事後にそれを証明できるのかと問われれば、一般的には難しいと言えるでしょう(認められる場合も認められない場合もある)。同様に、精神上の障害により意思能力がなかった状態を事後に証明するのは難しいことです。
そこで民法には「制限行為能力者」という規定があります。制限行為能力者とは、判断能力に問題がある、あるいは経験が乏しかったりすることにより法律行為上の約束や契約を守らせるのが難しい人のことです。このような人には保護者(親権者、未成年後見人など)を付けて判断能力不足を補わせる仕組みになっています。
制限行為能力者は、大きく分けて4つに分類されます。

①未成年者
②成年被後見人
③被保佐人
④被補助人

①の未成年者とは、20歳未満の人のこと(ただし婚姻すれば成年者と見なされます)。未成年者は、原則として保護者の同意がなければ法律行為を行うことはできません(お小遣いを使う=財産の処分など、例外はあります)。例えば未成年者がアルバイトをして貯めたお金でスクーターを買うことは、親の同意があれば問題ありませんが、親に内緒だった場合は問題が生じる可能性があります。制限行為能力者が1人で法律行為を行った場合は、その行為を取り消すことができます。つまり未成年者が「売買契約を取り消したい」と言えば、バイク屋さんは代金を返金しなければならない場合があるのです。したがって多くのバイク屋さんでは親の同意を確認するまでバイクを売らないようにしているはずです。

②成年被後見人とは、精神上の障害のため家庭裁判所によって後見開始の審判を受けた人のことです。成年被後見人は「判断能力が常に全くない人」であり、重度の認知症患者が代表的です。未成年者同様、成年被後見人が1人で行った法律行為も取り消すことができ、法律行為の大半は後見人の同意を得ていたとしても1人ではできません。

③被保佐人は「判断能力が著しく不十分な人」です。家庭裁判所により保佐開始の審判を受けた人のことを言いますが、原則としてすべての取引を1人ですることができます。ただし、不動産の取引などの重要な行為は保護者の同意がなければ取り消し可能になります(例:中程度の認知症の人)。 ④被補助人は「判断能力が不十分な人」で、やはり家庭裁判所により補助開始の審判を受けた人のことを言います(例:軽度の認知症の人)。被補助人の場合は「当事者が申し出た範囲内で、家庭裁判所が定めた特定の法律行為」を1人で行うことができません。やはり1人で行った場合は取り消すことができます。

なお、②~④のどれになるかは認知症の程度などによって決まるので、申請に当たっては医師との連携が必要になるでしょう。