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入会権

「にゅうかいけん」と読んだらNG!
入会権を「にゅうかいけん」と読んでしまうと、「会員権の取得資格か何かだろうか」と思ってしましそうですが、正しくは「いりあいけん」と読みます。法律用語であり、「にゅうかいけん」と読むと間違いとなります。また、会員権などではなく、土地に関する用語です。
入会権とは、一定の地域の住人が特定の森林や原野、漁場などを共同で利用する権利のことです。例えば薪炭(しんたん)用の雑木などを採取し、共用収益とすることを内容とする慣習法上の物権(特定の物を直接に支配する権利)がそれに当たります。慣習法とは「不文法」の一種で、一定の慣習のうちで法的拘束力があると意識されているもの、「法的確信」を伴うものです。有名な所では、イギリスの憲法のかなりの部分は慣習法から成ることが知られています(日本国憲法などは「成文法」)。
民法では入会権の内容については何も規定しておらず、その内容や効力などは地域の慣習により様々です。具体的には共有の性質を有する入会権と、共有の性質を有しない入会権について規定していますが(民法第263条、第294条)、前者は所有権の共有の規定を、後者は地役権の規定をそれぞれ準用するとしたうえで、地域の慣習に従うとしています。
入会権に関わる立法も
入会権を有する集団のことを「入会団体(いりあいだんたい)」「入会集団(いりあいしゅうだん)」と呼びますが、要するに村落共同体のことで、その大部分は「代表者が定められていない権利能力なき社団」であると考えられています。先に述べたとおり地域の慣習に従う面が大きいので、入会権による収益や入会地(いりあいち)管理の形態は様々で、明確になっていない場合もあります。
漁業にも入会漁業(いりあいぎょぎょう)がありますが、江戸時代には一般に地先海面(近くの海)は地元漁村の漁場で、沖合の海面は誰に対しても自由な入会であったと言います。現在では、入会漁業とは特定の専有利用権に基づいて共同利用されている一定水域の漁場を指すとされています。ただし近年では、漁業法、漁業協同組合合併促進法、水産業協同組合法などが定められ、漁業入会団体を規制する立法も行われています。
また、林野に関しては、「入会林野又は旧慣使用林野である土地の農林業上の利用を増進するため、これらの土地に係る権利関係の近代化を助長するための措置を定め、もって農林業経営の健全な発展に資することを目的とする」として(第一条)、「入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律」が定められています。これは入会権利者の合意により入会権を消滅させ、権利関係を明確にする仕組みを定めたものとなっています。