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アパート

アパートと言えば、2階建てぐらいの集合住宅が思い浮かぶと思います。アパートは一般的に木造か軽量鉄骨造で2階建ての集合住宅のことを言いますが、実は「アパート」や「マンション」に明確な定義はありません。不動産登記簿謄本には建物の構造や階建てなどについて記載があるのみで、これはアパート、これはマンションという区別はしていないのです。つまり、集合住宅をどう呼ぶかは扱う側の問題で、例えば大手ポータルサイト8社で構成された「不動産情報サイト事業者連絡協議会」では、軽量鉄骨造/木造等の建物をアパート、鉄筋コンクリート造/その他堅固な造りの建物をマンションと分類しています(サイト「SUUMO」プロが教える希望条件別の部屋選び)。最近では建築技術が向上したので、木造4階建ても可能になったとか。木造はアパートに分類するのが一般的ですが、マンションとして入居者を集めているところがあるかもしれません。

「アパート」の歴史

アパートの語源は集合住宅を意味する「apartment」「apartment house」という英語です。ちなみに「マンション(mansion)」は英語だと「豪邸」の意味。アメリカでは上流階級の住む地区でも設備の整ったアパートメントが存在し、都市によっては低価格でありながらフィットネスセンターやスイミングプールなどを備えた物件もあり、日本のアパートとは実情がかなり異なっています。このため、アパート、マンションは和製英語だと言われることもあります。

江戸時代から明治時代にかけては長屋が賃貸住宅の主流でした。最初は木造平屋建てで、お風呂はないので銭湯を利用、トイレは共用というものが一般的。明治以降には二階建てや各部屋にトイレが設置されたものが登場しています。長屋は共同で使うエントランスホールや玄関、廊下、階段などがないのが特徴で、各住戸へは屋外から直接出入りします。外部廊下などが必要ないので、それだけ各住戸が広くなるメリットがあります。最近では1階に複数の玄関を設けて上下に分かれた部屋に直接出入りする「重層長屋」が注目されています。

大正時代には関東大震災の復興支援のために「同潤会アパート」が建築されています。東京都内・横浜市内に計16棟が建設された日本最初期の鉄筋コンクリート造の耐火アパートで、西洋建築風の建物でした。それだけではなく、ほぼすべての建物の内部には水洗トイレ、電気・都市ガスなどの先進的な設備が取り入れられ、取り壊す際には保存運動が起こるほどの人気を誇ったと言います。1925年には日本で最初のアメリカ風本格アパートメントと言われる「文化アパートメント」が建てられています。4階建てでエレベーターも設置されており、1階には店舗、食堂、カフェが入っていました。このようなアパートは人々に近代化への憧れを抱かせましたが、いずれも家賃が高く、一般には木造2階建て、6畳1間、炊事場・トイレ共用の「木賃(もくちん)アパート」が流行しました。これらのアパートは長屋建てよりも居住性が劣るものでしたが、1960~70年代には民間住宅供給の主流をなしていたと言います。

(参考サイト:「レオパレス21」集合住宅の「建物」の歴史から賃貸経営を考える、「コトバンク」日本大百科全書等)