「青田買い」と言えば、企業が卒業前の学生に採用を内定することですね。青田とはまだ稲が実っていない、青々としている田んぼのこと。元々は稲の収穫前に収穫量を見越して先に買うことを青田買いと呼び、先物取引の一種でした。これが転用されて1960年代から優秀な人材を早めに確保する意味で使われるようになったそうです。ちなみに人材確保の意味で「青田刈り」と言うのは、本来誤り。青田刈りは戦国時代の戦術の1つで、籠城する敵地の稲を熟していないうちに刈り取って食糧不足に追い込むというのが本来の意味です。これだと人材の優劣を問わずに採用することになりそうですね。
同じように、収穫前の水田作物を先物売りすることは「青田売り」と呼ばれていました。戦前の農村で広く見られましたが、農家がお金を前借りしようとして不当に買い叩かれることも多かったのだとか。この青田売りも、現在では不動産用語として使われています。
- 広く行われている青田売り
- 「青田売り」とは、不動産用語で「未完成販売」のこと。建築工事や造成工事が完了していないにもかかわらず建物や宅地の販売などを行うことです。当然、「完成前の説明と違う!」といったトラブルが多発することが考えられるので、宅地建物取引業法では次のような規定を設けています。
- 青田売りをする場合、不動産会社等は、開発許可や建築確認等、工事に必要な行政の許可を受けた後でないと、広告や契約をしてはならない
- 不動産会社等は、契約前の重要事項説明で、完了時における形状、構造などについて記載した書面を交付して説明をしなくてはならない
- 契約時に売り主が買い主から受け取る手付金が売買代金の5%を超える場合、または1000万円を超える場合は手付金の保全措置を取らなければならない
住宅を買う側からすれば未完成な土地や建物を買うのは不安ですよね。しかし、実際には建売住宅や新築マンションでは普通に青田売りが行われています。青田売りに次のようなメリットもあるからです。 - 分譲業者から見たメリット
- 工事完了時には資金を回収することができる、地価が下落しても販売価格低下のリスクを低減できる、ユーザーのニーズに合わせたプラン変更が可能…等々
- ユーザーから見たメリット
- 優れた物件を早い者勝ちで押さえられる、希望通りの間取り変更がしやすい、完成時のチェックや補修なども徹底できる…等々
青田売りのデメリットとしては、分譲業者の場合はユーザーの都合(ローンの否認など)による契約解除のリスクが大きいこと、モデルルームのコストがかかること(販売価格となってユーザーにも跳ね返る)、ユーザーの場合は先物買いの不安以外にも、買った時点で実際の間取りなどが確認できない場合があること、契約してもすぐに入居できないことなどが挙げられます。