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アルコーブ

引っ込んだ玄関ドアを設置した空間
アルコーブとは、マンションにおいて共用廊下から数m離れたところに玄関ドアを設置したつくりのこと。元々は部屋や廊下などの壁面の一部をくぼませてつくった空間のことをアルコーブ(Alcove)と呼んでいたのですが、日本では先述したような玄関前の部分を指す言葉として定着しています。
マンションでアルコーブを採用すると、玄関前が共用廊下から離れているので、ドアを突然開けても通行人とぶつかることがありません。また、玄関ドアが引っ込んでいるので、ドアを開閉するときも通行人から中を覗かれにくいというメリットもあります。
さらに、アルコーブのないマンションでドアを開けっ放しにして作業をしたりすると通行人の邪魔になることが多いのですが、アルコーブがあれば通行人に迷惑をかけることがありません。ドアの内側にスダレやカーテン等を下げれば室内は見えなくなるので、夏場などには風通しの良い住環境を実現することができます。
デメリットらしいデメリットがないのもアルコーブの魅力です。玄関ドアが引っ込んでいるため玄関前が暗くなるという話もありますが、多くのアルコーブには照明が設けられています。ただ、アルコーブを設置すると外部に柵を付けたりするため、建築費が上がります。建築費の上昇がデメリットと言うことはできるでしょう。
なお、アルコーブは区分所有者に専用使用権が認められていますが、バルコニーと同じように共用部分になります。私物や避難通路の障害になる物を置くことは使用細則に違反しますし、消防署から警告を受けることもあります。また、マンションの美観を損なうと資産価値にも影響が出ます。
本来のアルコーブ
先に述べたとおり、本来のアルコーブは部屋や廊下などの壁面の一部をくぼませてつくった空間のことを指します。例えば日本建築の床の間もアルコーブの一種と見なすことができます。ただし、床の間(正しくは「床(とこ)」)は元々自分より身分が高いお客様をもてなす最上の部屋に設置されるもので、時代が下るにつれて掛け軸や生け花などを飾る場所になったという歴史があるので、アルコーブと言い切ってしまうとなんだか違和感がありますね。
アルコーブには他にもベッドを内蔵するスペースになっていたり、椅子とテーブルを置いてくつろぎの空間を演出したり、様々な使い途があります。洋室にはニッチ(壁龕[へきがん])という彫刻や花瓶などを飾るためのくぼみが壁に設けられていることがありますが、ニッチもアルコーブに分類することができます。