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奥行

建築における「奥行」
「奥行」といえば、一般的には次のような意味になります。

〈奥行〉
①家屋や地面などの、表から奥までの距離。裏行。
②比喩的に、人柄や思慮の奥深さ。

ちなみに、①の反対を意味する言葉は「間口(まぐち)」です。

〈間口〉
①土地・家屋などの前面の幅。表口。
②事業・研究などでの領域の広さ。

これに対し、建築用語ではより厳密に意味が決まっています。

〈奥行〉
建物や宅地の前面道路に接する境界から、その反対側の境界までの距離。

〈間口〉
前面道路に接している距離。

この「奥行」と「間口」を使って建物や宅地の形状や大きさをおおまかに示すことがあります。また、寸法でも使われます。

〈奥行〉
手前から向こう側の方向への水平距離。寸法を表すときの方向。家具などの場合は前面から背面までの寸法をいう。

家具などの場合は間口をW、高さをH、奥行をDで表します。WはWidth(幅)、HはHeight(高さ)、DはDepth(奥行)の略です。
前景・中景・後景
奥行を考えるうえで役立つ「前景・中景・後景」という言葉があります。主に絵画や写真などで使われる言葉で、前景とは主体(人物など)の前にある空間のこと、中景は中間地点にある空間、遠景は遠方の部分で、画面でいえば背景ということになります。
例えば風景写真を撮るとき、障害物を避けて撮影すると奥行感のない写真になってしまうことがあります。前景・中景・後景にできるだけ撮影要素を取り入れると写真に奥行が出ます。
建築物を配置するうえでも、前景・中景・後景の考え方は役立ちます。例えば手前、中間地点、その奥と、建物がずれつつ重なっていくように建物を配置すると奥行が演出できます。奥行感が感じられるということは、狭さを感じさせないことにつながります。部屋をデザインするときも、前景・中景・後景を意識すると実際の広さより奥行を感じられる部屋にすることができます。
借景
日本庭園には、風景を遠景として庭に取り込む「借景」という技法があります。借景は近くの山を庭の背景として庭に接続したり、小さな庭の中景・後景を背景にしたりする技法で、限られた空間である庭に背景を取り込むことで豊かな奥行のある景観を形成できます。歴史的には平安時代末期に始まるという、伝統ある技法ですが、表現する内容は時代によって異なるのだとか。近年は高層建築物などが借景を損なうケースも多々見られるといいます。