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意思表示

法的な意思表示とは
意思表示と言えば、子供が「どうしてもあのお菓子が食べたい!」と駄駄をこねたり、大人が「これから飲みに行かないか」と誘ったりするときに示される「意思」を連想すると思います。意思とは「しようとする考え、思い」のことなので、あれをしよう、これがしたいと表明すれば「意思表示」したことになるわけです。しかし、法律行為に関する「意思表示」は、一般的なそれとは異なります。
法律の世界では、意思表示とは「一定の法律効果を欲するという意思を外部に表示すること」とされています。意思表示は次の3つの部分から構成されます。

①内心的効果意思
具体的に、ある法律効果を意欲する意思のこと。
例:店頭で品物を買おうと意欲する意思

②表示意思
内心的効果意思に基づき、その意思を表示しようとする意思のこと。
例:店頭で品物を買うため、店員に「買いたい」と伝えようとする意思
※表示意思を内心的効果意思に含める考え方もある

③表示行為 内心的効果意思を外部に表示する行為のこと。
例:店頭で品物を買うため、店員に「買いたい」と告げること

なお、内心的効果意思のきっかけになった心の動き(例えば「プレゼントをあげたい」という思い)を「動機」と言いますが、「意思表示」の構成要素には含まれないと解釈されています。
法律効果を欲するか否か
細かく見ていくとややこしいのですが、「要するに意思表示とは心の中で思ったことを相手に伝えることなんだな」と考えても間違いではありません。しかし、この考え方には「法律行為」という要素が抜けているので注意する必要があります。
法律行為における意思表示の説明としてよく見かけるのが「デートの約束」です。内心で「デートしたい!」と思い、相手に「デートしよう」と伝えることは「意思表示」になりそうですが、そうはなりません。たとえデートの約束を取り付けても、一般的には「契約」とは見なされないからです。当事者の間には法的な権利も義務も生じていません。一方、例えば「スマホを売りたい」と希望する人がいれば、これは売買契約を結びたいということ。相手が了承して代金を支払うと約束すれば、支払い義務の発生という「法律効果」が生じることになります。このような法律効果を欲するという意思を外部に表示すること、それが法的な「意思表示」となります。
なお、内容が法律効果を欲する意思表示であっても、 相手方と共謀して真意でない意思表示をしたり(通謀虚偽表示)、公序良俗に反するとき、または意思表示が錯誤に基づくときなどは、その意思表示は無効になります。