ウチコミ!

インスペクター

建物の状況を検査・調査するための民間資格
インスペクター(inspector)とは、検査官、監査人、検閲官等のことであり、アメリカであれば警視正、イギリスであれば警部補の意味で用いられることもあります。そして建築の世界では、建物の状況を検査・調査すること(住宅インスペクション)に関する専門的な知識と技能を備えていると認められた者を特にインスペクターと呼んでいます。
日本ではインスペクターは公的な資格ではありませんが、一般に「既存住宅インスペクション・ガイドライン」(2013年、国土交通省)に基づく一定の講習等を修了して住宅インスペクションを実施できると認められた者がその名で呼ばれます。講習等は各種の団体が実施しています。
例えば国交省のガイドラインの概要は以下のとおりです。

①インスペクションは、検査対象部位について、目視、計測を中心とした非破壊による検査を基本にして、構造耐力上の安全性、雨漏り・水漏れ、設備配管の日常生活上支障のある劣化等の劣化事象を把握する方法で行なう。
②業務の受託時に契約内容等を検査の依頼人に説明し、検査結果を書面で依頼人に提出する。
③検査を行なう者は、住宅の建築や劣化・不具合等に関する知識、検査の実施方法や判定に関する知識と経験が求められ、住宅の建築に関する一定の資格を有していることや実務経験を有していることが一つの目安になる。
④公正な業務実施のために、客観性・中立性の確保(例えば、自らが売り主となる住宅についてはインスペクション業務を実施しないなど)、守秘義務などを遵守する。

さらに建物状況調査の質の確保・向上等を図るため、2017年2月には「既存住宅状況調査技術者講習登録規程」が制定され、「既存住宅状況調査技術者講習」を実施する仕組みが制度化されました。やはり住宅インスペクションに関する講習を国交大臣が登録した機関が行うもので、これを終了した「既存住宅状況調査技術者」もインスペクターです(団体によって資格名が異なったり、対象となる住宅が限定されていることがあります)。ただし、中には簡単な講習・試験で資格を与えるものもあるため、最低でも国家資格である建築士の資格を持っていないインスペクターには注意した方が良い、と警告する人もいます。
宅建業者のインスペクション義務
なお、宅地建物取引業者法に基づき、宅建業者は以下の義務を負います。

①既存住宅の媒介契約に当たって交付する書面に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載しなければならず、
②重要事項説明に当たって、建物状況調査に実施の有無及びその結果の概要を説明しなければならないとされているが(2018年4月1日から適用)、この場合の建物状況調査に当たるインスペクターは、建築士または国土交通大臣が定める講習を修了した者でなければならない。