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まちと住まいの空間 第24回 「ブラタモリ的」東京の街の歩き方、読み方――「タモリ目線」で見えてくるもの(1/4ページ)

岡本哲志岡本哲志

2020/05/29

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街歩き番組「ブラタモリ」が面白い理由

NHKの番組「ブラタモリ」、いまでは二桁の視聴率を常に維持する人気番組である。その「ブラタモリ」が2009年10月1日にシリーズとしてスタートした。

タモリさんの母校・早稲田大学から。これが第1作目だが、実はテレビ視聴者の反応を確かめるために、パイロット版が08年12月14日に放送された。場所は、「表参道・原宿」。放送時間帯が深夜にもかかわらず、NHKは充分な手応えを感じたようで、シリーズ化した時の放送時間帯は午後11時からとなった。

第2回は上野、第3回は二子玉川。このころは、まだタモリさんの好きな内容をふんだんに盛り込む考えが主眼で、「ブラタモリ」をどのような番組として位置づけるかは手探りの状況であったように思う。そのためか、視聴者の方たちも、民放の深夜番組「タモリ俱楽部」の続編くらいに当初思っていたようだ。

「ブラタモリ」は全国ネットで放送される番組である。東京をよく知る人も、東京をあまり知らない人も、一律に番組の視聴者である。内容が難しすぎても、やさしすぎても、高い視聴率は望めない。ブラタモリが高視聴率を維持しながら長寿番組に入りしつつある要因は、テレビという大衆の視聴をベースとしながら、思いのほか知識層を巻き込んだ点だろう。ともかく、新たな可能性を感じる番組のスタートが09年の秋に切られた。

私は、第4回の銀座(09年10月22日放送)で、案内人として登場した。今はあたり前の視聴率だが、10%に満たなかった視聴率が、銀座で初めて13%台の高視聴率をたたき出す。そこには、「ブラタモリ」をシリーズとしてどのように方向づけるかのメッセージが込められていた。「ブラタモリ銀座」では、タモリさんが冒頭から「平坦な街は嫌いだ」と番組への、あるいは私への“宣戦布告”とも思える発言からスタートする。このとき私は正確な台本を何も知らされておらず、突然と聞いたタモリさんの言葉に唖然とする。

当時は、どのような会話がされ、出会いの場面になるかは、集音マイクから音声を聞きながら待機していた。現在のブラタモリはそのようなことがない。ともかく、収録数分前なのに「この番組大丈夫か」との思いを引きずり、「銀座発祥の地」碑の前でタモリさん、久保田祐佳アナウンサーと絡むことになった(写真1)。テレビを見ていた人も、「どうなるのか」とテレビに引き込まれたと思う。勘ぐってしまうと、これも番組づくりスタッフの総意であったのかもしれない。


「銀座発祥の地」碑

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この記事を書いた人

岡本哲志都市建築研究所 主宰

岡本哲志都市建築研究所 主宰。都市形成史家。1952年東京都生まれ。博士(工学)。2011年都市住宅学会賞著作賞受賞。法政大学教授、九段観光ビジネス専門学校校長を経て現職。日本各地の土地と水辺空間の調査研究を長年行ってきた。なかでも銀座、丸の内、日本橋など東京の都市形成史の調査研究を行っている。また、NHK『ブラタモリ』に出演、案内人を8回務めた。近著に『銀座を歩く 四百年の歴史体験』(講談社文庫/2017年)、『川と掘割“20の跡”を辿る江戸東京歴史散歩』(PHP新書/2017年)、『江戸→TOKYOなりたちの教科書1、2、3、4』(淡交社/2017年・2018年・2019年)、『地形から読みとく都市デザイン』(学芸出版社/2019年)がある。

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