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賃貸物件は相続させたほうがいいのか――押さえておきたい5つのポイント(1/2ページ)

田中 あさみ田中 あさみ

2022/01/27

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イメージ/©️ maposan・123RF

「物件を相続させるか否か」という悩みを持つ賃貸住宅オーナーも少なくないでしょう。

不動産の相続は税制上優遇されているため、相続税の対象となる金額を圧縮できるというメリットがありますが、子どもが「相続したくない」と言うケースや、場合によっては売却しほかの資産に替えた方がいい場合もあります。

賃貸物件を相続する前に確認しておくべきポイントとは? 最低限知っておきたい相続の基礎知識とは?

今回の記事では賃貸物件を相続する前に確認しておきたいこと・知っておくべきポイントを5つ解説していきます。

賃貸物件を相続する前に知りたい・確認すべきポイント5つ

1.相続財産をピックアップ、一覧表にまとめる
相続人は被相続人(相続財産を残し亡くなった方)が亡くなった日(又は亡くなったことを知った日)から3カ月以内に、相続財産の全てを受け継ぐ(単純承認)・相続を放棄する・プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ(限定承認)を選択することになります。限定承認は主に被相続人の債務がどの位あるのか分からないときの手続きです。

相続放棄・限定承認を行う際には3カ月以内に家庭裁判所に申し立てを行います。何もしないときには自動的に「相続する(単純承認)」とみなされます。

相続人が単純承認・相続放棄・限定承認の3つを判断する際には、被相続人の全ての相続財産を把握しておくことが重要となります。

まずは賃貸物件を含めた相続予定の財産全てを財産一覧としてまとめましょう。

相続は遺言書があるときには原則遺言書通りに、遺言書がない場合は遺産分割協議で相続人全員の合意した内容、もしくは法定相続(民法で定められた相続人と割合)で行われます。

法定相続人とは?
法定相続人とは、被相続人の配偶者や子ども・父母・兄弟姉妹など民法で定められた相続人を指し、配偶者は常に相続人となります。

第1順位は子ども(亡くなった場合は孫)、子ども・孫がいない時は第2順位の父母(亡くなった場合は祖父母)、第1順位・第2順位の人がいない時には兄弟姉妹(亡くなった場合は甥・姪)が法定相続人となります。

2.子どもや親族などと話し合う
相続財産の一覧表を基に、子ども・親族などの法定相続人、親族以外で相続をさせたい方と話し合いましょう。

「親が賃貸物件を継がせたいが子どもは相続したくない」という事例は多く、場合によっては元気なうちに売却し生前贈与を行った方がいいケースもあります。

子ども自身が引き継ぐ意思があっても、「賃貸経営に向いておらず相続後赤字に」という事があり物件を自主管理(又は一部自主管理)する場合、物件と自宅との距離も重要となります。

子どものライフプランも判断のポイントとなります。「孫が○年後に大学進学を控えていてお金が必要」という理由で生前贈与する場合もあります。

加えて子どもが自宅を購入しローンを組んでおり、賃貸物件にもローンが残っている際には、「ローンを引き継げるか」という問題が生じます。

物件のローン残債も子どもが引き継ぐことになりますが、子どもの経済状況によってはローンを継続できず金融機関に断られることがあり、「物件は子どもAが相続しローンは兄弟の連帯保証」とするケースもあります。

賃貸物件を始め不動産相続では相続登記を行う必要があり、コスト面・手続き面を含め相続人の負担が大きくなりがちです。

子どもの意向や適性、管理のしやすさ、ローン、相続人の負担などさまざまな視点からじっくり話し合いましょう。

3.相続税はかかる? 評価額をシミュレーション
相続財産の評価額を計算し、相続税が課されるか否かを試算します。

不動産の評価額は以下の通りです。

土地:路線価方式(時価の約8割)又は倍率方式
https://www.rosenka.nta.go.jp/
上記サイトで確認できます。

建物:固定資産税評価額(時価の約7割)
固定資産税の納税通知書に記載されています。

役所の固定資産課税台帳を閲覧又は固定資産税評価証明書を取得することでも把握できます。

加えて相続・遺贈によって得た事業用・居住用の土地で、要件を満たし一定の面積までの部分を減額する「小規模宅地等の特例」という制度があり、50~80%の価額が減額されます。

例えば土地を不動産貸付業として利用しており、相続人が貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ事業を行っている、申告期限まで所有している場合には200㎡までの土地の評価額が50%減額されます。

定期預金・普通預金・自動車も定められた評価方法があります。

定期預金:預入残高+利子-源泉徴収額
普通預金:相続・贈与日の預入残高
自動車:調達価額(評価時に同じものを買う場合の値段)
または新品の小売価額―経過年数の減価償却費

株式・債券など有価証券は価額が変わりますので、おおよその金額で試算しましょう。

基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税が課される可能性が高いですが、誤差が生じることもあります。

相続税は配偶者控除(1億6000万円までまたは法定相続分の1/2)など控除制度を活用することで全額控除となるケースがあります。

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この記事を書いた人

2級FP技能士・ライター

北海道在住。大学在学中に2級FP技能士を取得。 会社員を経てFP資格を活かし、ライターとして不動産・金融・相続・法律分野の記事を多数執筆する。「難しいことを分かりやすく」をモットーにライターとして活動中。

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