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人も猫も離れられなくなる築42年満室アパートの秘密に迫る

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近年、新型コロナ禍のペットブームが続いているにもかかわらず、賃貸市場において「ペット可」物件は少ない現状にあります。一般的な賃貸ポータルサイトでは、「ペット可」としている物件はなんと全体のたった10%ほどというデータも。
「ペット可」物件が少ない背景には、ペットを飼うことで生じる騒音や匂い、室内のキズなど貸し手である大家側に伴うリスクが大きな要因であることは言うまでもありません。しかし、この需要へうまく適応できれば、他の物件との差別化につながる可能性もあります。

今回は、自身の物件を「猫専用アパート」にすることで、空室率50%の状態から満室経営に成功した水野オーナーに密着し、満室になるまでの道のりや「ペット可」に対する考え方などお伺いしました!(取材/加藤 彩夏・文/田中 佑菜)


水野オーナー

なぜ物件を「猫専用アパート」に?


猫専用アパート キャットカーサ 清瀬

私は10年前に父からアパートを受け継ぎ、2代目大家として賃貸経営をしています。しかし、物件を引き継いだ当初は8部屋中4部屋が空室という状態でした。アパートは立地こそ最寄り駅から徒歩3分と良いものの、車移動が多いエリアのため「駅近」が強い魅力とは言えず、さらに木造築42年で3点ユニットやバランス釜がネックとなり、なかなか入居者が決まらない現状でのスタートとなりました。

物件を受け継いでから空室を埋める方法をいろいろと考えましたが、どうしていいか分からず2年も物件に手が付けられずにいた時期もありました。

悩みに悩みんだ結果、いっそやるなら好きなこともついでに物件にプラスしちゃおう!という考えに至り、思い切って大好きな猫と賃貸物件を掛け合わせた、「猫専用アパート」を作ることにしました。そして、空室が出るたびに部屋を猫仕様にリフォームしてきました。

現在は、以前から入居していただいている部屋をのぞく5部屋のリフォームが完了し、猫を複数頭飼っている入居者さんが多く住んでいます。

意外とハードルは低い?「ペット可」でのリスクを抑えるためのポイント

——人にも猫にもやさしい物件だから住みやすく退居後も部屋がきれい

大家仲間の話を聞いていて感じた「ペット可」への懸念ポイントは、入居者間でのトラブルにつながらないか、そして物件が傷つけられないかという点です。

私自身、猫が大好きで複数頭の猫と一緒に暮らしているので、その経験を生かして工夫をして部屋作りをしています。


お掃除が楽で丈夫なフロア素材を使用

私が一番大切だと思っているのは、傷つきにくく掃除しやすい、そして猫が安全に暮らせる物件であること。つまり「人にも猫にもやさしい物件」ということです。うちの場合は築年数が古い分、大規模なリノベーション+猫仕様に、という感じですが、水回りを除けば35万円程度で抑えられています。壁紙やフロアタイルも、ポイントを押さえて選ぶことができればお手頃な価格のものでも全然大丈夫です。

一度部屋を猫仕様に整えておけば、部屋が傷つきにくくなりますので退去の際もクリーニング程度で済ませることができます。

——見るべきは「ペット」よりも「人」?

 

入居する前に入居希望者と面談をするようにしています。面談と言っても簡単に人柄を見たり猫についての質問をしたりする程度ですが、ビデオ通話やZoomで行うため入居希望者の部屋が背景に映ると、きれいに部屋を使っているかどうかもついでに確認できて一石二鳥です。

また、通常の「ペット可」物件では上限を1匹までとしている場合が多いですが、ぶっちゃけ私の経験上3匹までであれば飼育状況はさほど変わらないと思っているので、上限を2匹(多頭飼い要相談)としています。避妊・去勢手術をしていれば、鳴き声や臭いの問題もほぼありませんね。

なので、どちらかというと猫よりも入居希望者の人柄や猫をしっかり育てられる財力があるかという点を見るようにしています。猫1匹の生涯に250万円ほどかかるといわれているので、逆に猫を複数匹きちんと育てられることが確認できれば安心材料にもなります。

——「多頭飼い要相談」で誠実な入居者が集まる?

私の物件のご入居いただいている方は、猫を2匹以上飼える物件を探していた方ばかりです。家賃は相場より2万円ほど高いのですが、長い方だと8年間も住んでいただいています。

そもそも、ペット飼育禁止の物件や、1匹までと上限が決まっていても黙って飼う、いわゆる「闇飼い」をする方も中にはいらっしゃると思います。大家をしている私の知人も、ペット飼育を禁止にしている物件で入居者さんが「闇飼い」をしてしまい、こだわって作った内装が傷だらけになってしまったという話を聞いたことがあります。

逆にうちの場合「多頭飼い相談可」と明記しておくことで、「きちんと確認しよう」と考える方に物件を見つけてもらえていると感じています。
結果として誠実な入居者さんと出会うことができていますし、ペット以外の面でもゴミ出しの分別などの入居マナーも、明記する前と比べて改善されてきているので、猫さまさまだなと。(笑)

募集時のポイント

——物件の個性をいかにアピールできるかがカギ

「猫専用アパート」というのは、ペット可物件専用の賃貸サイトならアピールしやすいのですが、一般的な賃貸のポータルサイトではそもそもの掲載数が多く埋もれてしまいがちです。また、物件の個性的な部分をアピールしやすい仕様ではないので、自分なりに工夫する必要がありました。

掲載ページには、とにかく目を引くために猫が写っている写真を掲載したり、部屋のいたるところにメモを貼っておくことで、物件の事をあまり知らない不動産会社の方でも内見時に猫仕様の部屋を説明しやすいよう工夫しています。初めは募集を開始してから埋めるまでに半年ほどかかっていましたが、最近では2週間ほどで申し込みが入るようになってきました。

 

——「ペット可」で空室が埋まるのか?

物件を「ペット可」にすることで、うまくいけば物件の差別化や家賃の値上げにつなげることができます。しかし、単に「ペット可にしておけば空室が埋まる!」という考えであればおすすめしません。
空室対策の1つとして物件を「ペット可」にするのであれば、ペットの前にまずは「人」にとって快適・住みたいと思う物件か、という点を見つめなおす必要があります。

例えば、うちの物件は父からアパートを受け継いだ当初、バランス釜と3点ユニットの風呂がありましたが、すべてバストイレ別へ変更しました。また、たたみやふすま・障子は爪でガリガリされてしまうので対策をするのが難しいため、和室は基本的に「ペット可」には不向きです。

つまり、ただ「ペット可」にすれば空室が埋まるという考えではなく、「ペット可」が物件の付加価値となるように、自分の物件を見つめなおしたうえで向き不向きも考慮しながら取り入れることが大事ということですね。

水野オーナー、ありがとうございました!
自分自身の好きな要素や経験を生かした物件作りが、しっかりと物件の付加価値になっていることも猫も人もとりこになってしまう満室物件の秘訣なんですね。
空室にお悩みの大家さん、ぜひ選択肢の一つとして「ペット可」を検討してみてはいかがでしょうか。



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この記事を書いた人

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