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令和のマンション管理危機 管理会社に見捨てられるマンション、食い物にされるマンション(3/3ページ)

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カーボンニュートラル、SDG's推進が求められる大規模マンション

さらに大規模マンションでは、設備の入れ替えや建物の老朽化による修繕のほかにも法令などの改正により設備などの改修、追加などが加わることが予想される。

例えば、マンションの共用部分として扱われる駐車場についても、今後は難題が次々と出てきそうだ。

具体的には件のマンションに限らず、湾岸エリアではマンション住人は若い人も多く、公共交通機関が発達しているため、マイカーを持たないマンション住民が増えている。このためマンションの駐車場の空きが増え、駐車場収入が減る物件が続出中だ。

空き駐車場が増えた背景にはマンションの駐車場は、自治体が一定の規模のマンションに対して、実態に合わない駐車場の付置義務を課す場合が目立つため、起こるべくして起こっている事象なのである。

しかも、駐車場部分の土地や設備にも、竣工後は、税金を含むコストが確実にかかり、固定資産税などの税金からも逃れられない。自治体が仕込んだとも思えるほど、税金が取れる構造になっている。

おまけに機械式の駐車場は、その維持管理・交換費はかなり高い。マンションの住民向けの駐車場のなかには、維持費(設備更新)などが駐車料金収入を上回る「赤字事業」になっているものもある。

さらに駐車場は、業者にとっては打ち出の小槌だ。例えば、駐車場のチェーンゲートの開閉の単機能リモコンは、原価は数百円ほどといわれるのだが、これを1万以上の価格で管理組合に売りつける場合もあって、一事が万事、素人集団の管理組合の理事会では適正価格での調達は至難の業だ。

そして、極めつきは駐車場に関係した費用負担で、EV(電気自動車)の充電設備導入という難題である。

ご存じのようにいまの日本は、国をあげて「カーボンニュートラル」「省エネ」を推進しており、一定規模の事業所やマンションに充電設備の設置を義務付けることが想定される。当然のことながら、これも管理組合が対応しなければならなくなる。

一定の補助金が出されることが予想されるものの、管理組合の財政支出が増えることは間違いない。実際、ガラス問題で揺れる豊洲のマンションでは、すでにEV車(電気自動車)の充電施設が導入されている。

一般的には駐車場関連の修理や設備の設置費用は、修繕積立金から出される。マイカーを持たない住民にとって、駐車料金によって修繕積立金が増えればよいが、コスト割れともなれば車保有者のためにコストを負担させられるかたちになる。

本来であれば、利用者の費用負担と便益(受益)を一致させるべきだろう。しかし、駐車場の関連費用は、建物の修繕費用と合わせて管理する、まさにどんぶり勘定で行われており、その実態については、国(国交省)も見て見ぬふりのほっかむりだ。

しかも、マンション管理に無関心な住民は、そうしたコストの応能負担意識がないため、管理組合の理事会や総会でまるで議論にはならないのが普通。結局、何もかも修繕積立金や管理費から捻出する「どんぶり勘定」に慣らされ、問題意識がないままなのだ。

これは駐車場のEV対応ばかりではなく、2050年カーボンニュートラルの目標達成のため設置共有部分にさまざまな「脱炭素」「SDGs」「省エネ」という社会貢献イメージと、「補助金」という導入しやすい言葉のオブラートに包み、設備更新の勧誘、あるいは義務化さえも行われる可能性も否定できない。

すでに管理会社はこうした未来を見越しており、そうした設備が求められない小規模マンションを切り捨て、無関心なマンション住民の多い大規模マンションに絞り込み、国が進める環境政策に乗っかるかたちで大手を売り込める環境を待ち望んでいるのであろうか。

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この記事を書いた人

都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。

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