これからの街づくりと待ったなしの“老朽化マンション”再生問題(4/6ページ)
ウチコミ!タイムズ編集部
2021/10/13
■地域住民主体型
自治会が主体となって、行政や関係事業者に積極的に働きかけ、関係機関と連携した取り組みを行っているケースである。
東京郊外の高齢化率が約50%を占める住宅団地では、自治会が行政などに積極的に働きかけてサポートを取り付けることで再生へ動き出している。高齢者向けの活動、子ども向けの活動、防犯活動、買い物環境の整備(移動販売の導入)、地域交流活動、ショッピングセンター地区の再生検討という6つの取り組みに分け、地域住民が自分たちでできることと、自治体や専門家と共に取り組むべきことを区別し、自治体などと協働すべきところは、積極的な働きかけを行いさまざまなサポートを取りつけて活動しているという。
また、自治会自らが建設工事を発注したり、自動車を購入・保有したりできるよう、認可地縁法人(自治会、町内会等広く地域社会全般の維持や形成を目的とした団体・組織のなかでも、地方自治法などに定められた要件を満たし、行政的手続きを経て法人格を得たものを指す)を取得しているということも新しい動きである。
埼玉県にある高齢化率43%に及ぶ住宅団地は、非常に急勾配な北斜面地に開発された住宅団地であり、現在は30分に1本しか電車が通っていない状態である。かつては大手のスーパーがあったが撤退し、日常の生活を賄う商業機能がこの住宅団地内にはない状態である。
この住宅団地では自治会が主体となりながら、再生活動のコーディネーターとして大学を巻き込み、NPOや事業者などのさまざまなプレイヤーと連携しながら再生に取り組んでいる。再生の取り組みのほかにも、日常の買い物や通院など団地外への移送サービスを、自治会と居住者が立ち上げたNPOの2つで協力して行っている。
注目すべき新しい取り組みとして、活動の主体を担っている自治会では、役員の任期により交代してしまうと活動に限界があることから、自治会組織とは別に、再生を担う組織として新たにNPOの組織化を始めていることだ。これをきっかけに、自治会から徐々に担い手を地域住民主導のNPO組織へとシフトし、自治会の限界を超えて再生を進めていく流れだ。
いずれにせよ、地域住民が地域への関心をいかに高めていけるかが、住宅団地の再生を考えていくうえで重要であり、居住者自らが再生を自分たちの問題として捉え、危機感をもって主体的に取り組んでいかなければ、持続的な再生にはつながらない。そして、自分たちだけで解決を目指すのではなく、行政、NPO、企業、大学などとつながり、共に取り組まなければ解決できる問題ではないことは間違いないようである。
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