これからの街づくりと待ったなしの“老朽化マンション”再生問題(3/6ページ)
ウチコミ!タイムズ編集部
2021/10/13
急速な高齢化が進むニュータウンなどの住宅団地
前編で触れた「ニュータウンや郊外の団地の高齢化」について、この問題の解決の糸口はみえているのだろうか。長谷川氏によると、現状さまざまな取り組みが行われているが、成功している事例としては2パターンあるという。一つは開発事業者であるデベロッパー主導のもの、もう一つは住民が主導のものである。それぞれのケースをみてみよう。
■関係事業者主導型
「開発事業者主導型」の住宅団地の再生は、該当住宅団地を興じた事業者が再生にも関わるケースである。
鉄道事業者が関わったケースでは、住宅団地の住人が減ることにより出勤や通学に電車を使わなくなったため、電鉄会社の収益にも打撃を与える結果になっている。加えて、住宅団地内にある商業施設の土地なども電鉄会社所有であることが多く、開発事業者である電鉄会社にとっても住宅団地再生は解決しなくてはならない大問題なのである。
そこで行われている取り組みとして、鉄道沿線の圏域ごとに、駅前と郊外の住宅団地の間で、ライフステージに応じた住み替えを促進させ住宅団地の再生を図っている。例えば、20代〜30代の若い世代はまず駅前の賃貸住宅に住み始め、30代の半ば頃になりマイホームを購入するとなったとき、郊外住宅団地の既存住宅を確保してもらう。そこに住み続けていくなかでリフォームをしたり、住宅団地のなかで住み替えをしながら60歳ぐらいまで郊外住宅団地に住み続けてもらう。それ以上の年齢になり、車での生活が難しくなると郊外は不便になるため、駅前にサービス付き高齢者向け住宅などを整備して、そこに住み替えてもらう。また、そのあいた住宅を子育て世代に……という長期間にわたってサイクルを形成しようというものである。
この場合、既存住宅の流通が要となるので、戸建て住宅でも長期の維持・保全計画の作成を支援し、価値を維持できるようにしなくてはならない。住宅の状態を専門家が診断するインスペクションの体制を充実させたり、地元の金融機関と連携して将来のリフォーム資金の積立て制度を検討するなどの取り組みも行われている。
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