これからの街づくりと待ったなしの“老朽化マンション”再生問題(2/6ページ)
ウチコミ!タイムズ編集部
2021/10/13
「マイホーム神話」の崩壊 テーマは「アフォーダブル住居」
コロナの影響により、国民の日常生活の変化が、不動産・賃貸業界にも大きな影響を与えている。働き方の変化だけでなく、経済的不安もあり、高額なローンを組むことに不安を抱える若者たちも増えた。進学や就職で賃貸のワンルームマンションに一人暮らし、その後結婚し、子どもが赤ちゃんの頃までは賃貸でお金を貯めて、子どもの成長と共にローンを組みマイホームを購入。そして、子どもたちが大きくなり家を出て、夫婦で住み続ける……。持ち家があれば安心という「マイホーム神話」も崩壊に向かっているのだろうか。
「戦後の“人生60歳”モデルケースから、私たちの世代は80歳、これからの世代は人生100年と言われ、いままでのモデルケースではフィットしなくなってきました。寿命が長くなるということはその分費用もかかります。いままでのように、住宅に全資産をかけ莫大なローンを払い続けていく、ということは難しくなってきているのです」(長谷川氏)
そのときの状況に合わせて住居タイプを選ぶ、というような選択も増えていくであろう。賃貸住宅でも今後は、ファミリー用物件の需要が増える可能性もある。
「いままでの賃貸経営は、『物件に費用をあまりかけず短期間で投資資金を回収する』というビジネスモデルが主流でした。賃貸住宅でも長く住めるよい物件を作ること、いろいろな住み方を提供すること、コミュニティなども重視しつつ、住人が満足できる豊かな住環境にしていくことが課題です」(長谷川氏)
それは賃貸だけにとどまらない。
「既存住宅を安く購入し、自分好みにDIYしながらアフォーダブル住居(良質かつ高額すぎない余裕のある住居)に居住するというような選択肢もあるのでないでしょうか。既存住宅の活用も含め、アフォーダブルな住宅供給の取り組みも課題の一つです」(長谷川氏)
賃貸の家賃を、アフォーダブル住居の購入資金に充当することでローンの完済期間を短くし、修繕費などにも充てることができる。引っ越す、移住するという選択肢も増え、人生100年時代における資金計画、そしてライフスタイルの多様性にもフィットしていると言えよう。
“子どもが育つと広い家は必要がない” “老後は住居に広さや庭は求めないが、通院や生活がしやすい市街地のマンションがいい”という意見も多い。高齢化により、変わり始めていた“住まいに求めるもの”が、コロナ禍により加速し、変化していくことは間違いなさそうだ。
この記事を書いた人
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