キーワードは「平和とサッカー」 広島・長崎で進む旧市街の再開発(3/3ページ)
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2021/10/28
街づくりに懸けるジャパネットたかた
地域振興を強力に推進するジャパネットホールディングス 写真はジャパネットたかた HP 撮影/編集部
しかし、これは単なるスタジアムオープンではなく、事業主体がテレビショッピングの「ジャパネットたかた」で知られるジャパネットホールディングス(以下=ジャパネット)」という点でも注目が集まっている。ジャパネットは長崎県の地場企業で、テレビショッピングの最大手。同社が、商業施設やホテルも併せ持つ「長崎スタジアムシティ」をつくる街づくり企業グループに変身中なのである。
ジャパネットは17年に、J2の「V・ファーレン長崎」の運営会社を子会社にしたうえで、18年に三菱重工長崎造船所の幸町工場跡地におけるスタジアム型の珍しい総合再開発業務に乗り出している。そこで20年にはスポーツと地域振興の事業を両輪とする新会社「リージョナルクリエーション長崎」を発足させた。
そして、満を持して、24年にはV・ファーレン長崎のホームスタジアムを諫早市から長崎市へと移す。この新スタジアムを中心に、アリーナやオフィス、商業施設、ホテルなどで構成する複合型施設「長崎スタジアムシティ」を開業させるというわけだ。行政顔負け、いや脱帽の「速攻」の民間主導の街づくりだ。
長崎スタジアムシティプロジェクトのイメージ 出典/ジャパネットホールディングス
ジャパネットは、古くからアジア・欧州に開かれた長崎エリアの企業らしく、何度も海外のスタジアムの視察を行い、コンサートや室内スポーツができるアリーナも設立。プロのバスケットボール球団も発足させた。
長崎駅から徒歩10分という好立地のスタジアムシティについて同社は「いろんな地域課題の解決につながる構想で、会社の創業の地の長崎に恩返ししたい」とその意気込みを示している。同社のテレビショッピングではないが、「ワクワクできるか」を大切な急所とし、さらに平和のメッセージを発信できるようになるのか。
新型コロナによってインバウンド需要が以前のように戻るのには相当時間を要するだろう。そんななかで被爆都市として平和のメッセージを発信し続け、サッカーというスポーツを核として変貌しようという広島・長崎の再開発の行方がどうなるか、注目される。
この記事を書いた人
都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。