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〜この国の明日に想いを馳せる不動産屋のエセー〜

パラリンピックから考える、障害と不動産業(3/4ページ)

南村 忠敬南村 忠敬

2021/09/17

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不動産業界に求められている住宅弱者居住支援という課題

翻って、今回のテーマに無理やりつなげなければならないのだが、東京パラで何を得たのかというと、不動産業界に求められている住宅弱者への居住支援という課題への取り組み方である。

国交省風に表現すれば、「住宅確保要配慮者」に対する差別なき斡旋の確立である。住宅確保要配慮な人とは、低額所得者、被災者、高齢者、障がい者、子育て世帯が定義(新住宅セーフティネット法)だ。この世帯に向けた国側の住宅政策として、民間住宅(主に賃貸住宅)を扱う家主や事業者に対して、『入居を拒まない賃貸住宅の登録制度』を活用した住宅の登録戸数の拡大を期待している。

しかし、これがまた遅々として進んでおらず、登録住宅戸数は期待通りに増えていない。また、登録される住宅の質的な問題も浮上しており、一般市場では人気の薄い物件の登録が目立ち、需要にマッチしていない状況が表面化している。すなわち、地域的、交通利便的に不便、賃料が近隣に比して高め、ワンルーム仕様が多いなど、いわゆる人気薄の物件だ。

そもそも、民間賃貸住宅の経営は営利目的であり、福祉目的ではない。長年この仕事をしていて、特に高齢者や障がい者に優しい住宅は未だに少ないと肌身で感じている。


高齢者や障がい者に優しい住宅は少ない イメージ/©︎imtmphoto・123RF

住宅確保要配慮者の入居に対する大家の意識として、高齢者に対して約6割、障がい者に対して約7割、子育て世帯に対して約1割、外国人に対して約6割が拒否感を持っているという実態を調査データ[日本賃貸住宅管理協会(平成26年度)家賃債務保証会社の実態調査報告書]が示すが、制限や拒否の理由として挙げられる、「家賃滞納」「生活習慣の違い」「近隣トラブル」「貸室内での死亡(事故・事件含む)」などに対する不安という至極当然な理由を、払拭できるか否かによって大家の意識が大きく改善するとは一概に言えない。なぜなら、そこには根の深い日本人特有の人権意識が要因としてあると思うからだ。

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この記事を書いた人

第一住建株式会社 代表取締役社長/宅地建物取引士(公益財団法人不動産流通推進センター認定宅建マイスター)/公益社団法人不動産保証協会理事

大学卒業後、大手不動産会社勤務。営業として年間売上高230億円のトップセールスを記録。1991年第一住建株式会社を設立し代表取締役に就任。1997年から我が国不動産流通システムの根幹を成す指定流通機構(レインズ)のシステム構築や不動産業の高度情報化に関する事業を担当。また、所属協会の国際交流部門の担当として、全米リアルター協会(NAR)や中華民国不動産商業同業公会全国聯合会をはじめ、各国の不動産関連団体との渉外責任者を歴任。国土交通省不動産総合データベース構築検討委員会委員、神戸市空家等対策計画作成協議会委員、神戸市空家活用中古住宅市場活性化プロジェクトメンバー、神戸市すまいまちづくり公社空家空地専門相談員、宅地建物取引士法定講習認定講師、不動産保証協会法定研修会講師の他、民間企業からの不動産情報関連における講演依頼も多数手がけている。2017年兵庫県知事まちづくり功労表彰、2018年国土交通大臣表彰受賞・2020年秋の黄綬褒章受章。

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