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生活保護はほとんどの人が受けている 間違えたくない文明社会での「人を別ける」線引き(3/4ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/09/18

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ところが、その生涯収支(さきほどの定義による生涯収支)を計算すれば、意外にも国民平均よりも黒字幅のせまい人、ひょっとすると赤字の人さえいるかもしれない。すなわち、高額納税していた時期もあり、極貧に沈んだ時期もありの、波乱万丈の人生を歩んでいるような人など、それに当たるだろう。

加えて、ホームレスの人など、なおさらのこととなる。

彼らのなかには、ポリシーとして、公的な保護や援助を受けない人も多い。諸々の給付にも頼ろうとしない人が多い。つまり、共同体への経済的依存度がきわめて低い毎日を過ごしている人が少なくない。

そのうえで、仕事をもつ人にあっては、人にもよるが月2~3万円前後は収入を得ていて、このほぼ全てを食費等の消費にあてている。つまり、立派に消費税を納めている。であれば、現在ホームレスでいる人は、その多くが、月次、年次といった足元の決算においては、共同体との収支が赤字のはずだ。そのうえで、彼らの“生涯収支”を計算すれば、さきほどの制度上の生活保護受給者同様、対共同体における収支貢献度が国民平均を上回る人がぞろぞろと出てくる可能性も高いだろう。

よって、こうした観点からすると、件のメンタリスト氏は、どうも今回とんちんかんなところに線を引いている。

彼は、“目下”ホームレスである人、および、“目下”制度上の生活保護受給者である人を一時の属性に基づき短絡的に囲ったうえで、彼らを「(人間の)群れ全体の利益にそぐわない人間」と、規定している(発言の脈絡上明らかにそう理解できる)。

しかしながら、その認識は感情的かつあまりに雑すぎる。なぜなら、利益にそぐわないのは、述べたとおり彼らだけではないのだ。しかも、彼らのなかにおいても、利益に「そぐう」人が、実はちゃんと存在している可能性がある。そのため、メンタリスト氏が、それでも「群れ全体の利益にそぐわない人間」を国民の中から切り分け、文句をつけたいのであれば、線引きは上記の生涯収支が赤字か? 黒字か? で行うしかない。

ほかでやろうとしても、それは霜降り肉の脂と赤身を分ける線を探すようなもので、要は切り口など見定めようにも見定められないということになるわけだ。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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