「コロナ禍モード」を脱せない商業地が東京と大阪に集中――国交省の地価LOOKレポート(3/3ページ)
朝倉 継道
2021/09/06
次に、大阪圏だ。こちらも東京圏での区部の状況同様、下落の「×」がほぼ大阪市内に集中している。まさに都心が沈んでなかなか浮かび上がらないかたちを呈している。
「大阪圏」(京都・大阪・兵庫)
出典/国土交通省「地価LOOKレポート」を基に著者作成
このとおり、日本の大都市部地価におけるコロナ・ショックの(いまのところの)爪あとについては、その様子がかなりはっきりしてきたといえるだろう。
すなわち、地方の大都市部よりも東京圏・大阪圏、東京圏・大阪圏の中でもより都心部と、商業地区としての集積度が高いエリアになればなるほど影響が大きかった事実が示されている。
今後が注目される都心オフィスの動向
さて、こうした商業系地区における「住高商低」「都心の沈み込み」といった状況の中、3つのエリアに注目してみたい。
東京都の「千代田区丸の内」「千代田区有楽町・日比谷」「中央区八重洲」だ。隣接する都心の3地区となる。前回の地価LOOKレポートではいずれも評価が「横ばい」だったところ、今回分では枝の先がポキリと折れたように「下落」となっている。前述した「商業系地区で、変動率区分が下方に移行した4地区」のうち3つは、これらが占めていることとなる。
主な要因はオフィスだ。3地区ともに、今回の評価においてはオフィス需要の弱含みが地価の下落傾向を招いている旨指摘がされている。なお、同じような見方は、同じく都心の“連続下落組”である、六本木や渋谷などにも見られるところとなっている。
オフィス市場は、今回のコロナ禍によって最もフェーズの変化した不動産マーケットである可能性が高い。すべての企業や労働者に対しての割合をいえば、多分多いとはいえないが、リモートワークを成功させたり、あるいはその継続にメドをつけられたりした企業は、そうした体制を今後も維持、または進展させていくであろう蓋然性を持つ。
なぜならば、そのワケは単純でコロナ禍のもとリモートワークが上手く回った職場や会社というのは、とりもなおさず、そもそもがリモートワーク向きの仕事をしていた職場や会社であるからだ。
こうした存在にあっては、コロナ禍が将来過ぎ去ったあともおそらく後戻りはせず、彼らがオフィスへのコストを削る分だけ、オフィス需要も削られる。当然、それは地価にも影響を与えていくことになるだろう。
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この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。