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〜この国の明日に想いを馳せる不動産屋のエセー〜

不動産屋に文章能力は必要か?(2/3ページ)

南村 忠敬南村 忠敬

2021/08/10

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対面、手紙、SNS、メール…それぞれに一長一短あるが、ベストは? 

拙者の立場上、同業他社から業務に関する相談や質問を受ける機会が多い。不動産業を始めたばかりの方から、ベテランの営業マン、経営者まで、ご当人の属性も千差万別の中での相談内容は、多岐にわたる。その際、電話やメール(SNS媒体も当然)、対面での対応を希望される方もあって、その頻度は年間100件を超える。

最も的確にお応えできる方法はやはり対面だ。相談案件の資料や写真などを持参いただき、ご本人から直接経緯を聞き取れるから、「ん?」と思うことは何度でも確認できる。ただ、時間的制約を受けるのがデメリット。ご訪問いただく日程調整の影響は、自身の予定の一つとして組み入れるから、他の予定との調整が必然となる。

あとの媒体は五十歩百歩。どれも一長一短があって、けっこうなストレスを感じさせてくれる。とどのつまり、人間という“言葉で意思を伝える動物”は、自分の脳裏で言語を組み立て、それを音に変換して伝播させるから、自ずと各人の脳に蓄積されているボキャブラリーや、言語中枢の働き具合によって同じことでも表現が変わる。故にこちらへの伝わり方が異なってしまう。

記憶のメカニズムは個人の能力(頭の良し悪しではない)によって違うから、言葉で表現するまでに辿る脳のロジスティックな作業の結果から選び出される“言葉”が、人によって違うということになる。対面だと、「それはこういうことですか?」と逆質問で解決できるのだが、電話→チャット型SNS→メール→手紙やFAXという順にその度合いは低くなっていく。


日本語は楽しい言語 イメージ/©︎melpomen・123RF

最近、続けざまにいただいた二種類のご相談。このやり取りが正に今日の“噺”の結論だった。

両方とも最初はメールから始まり、一方はメールのやり取りから電話、遂には訪問と、ご相談者はご自身の納得いくまで問題解決を図ろうとされた。他方のご相談者は、メールでの返信に満足されたのか、リアクションはなかった。そのいずれのやり方を評価するのではない。本題は相談内容の伝え方である。

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この記事を書いた人

第一住建株式会社 代表取締役社長/宅地建物取引士(公益財団法人不動産流通推進センター認定宅建マイスター)/公益社団法人不動産保証協会理事

大学卒業後、大手不動産会社勤務。営業として年間売上高230億円のトップセールスを記録。1991年第一住建株式会社を設立し代表取締役に就任。1997年から我が国不動産流通システムの根幹を成す指定流通機構(レインズ)のシステム構築や不動産業の高度情報化に関する事業を担当。また、所属協会の国際交流部門の担当として、全米リアルター協会(NAR)や中華民国不動産商業同業公会全国聯合会をはじめ、各国の不動産関連団体との渉外責任者を歴任。国土交通省不動産総合データベース構築検討委員会委員、神戸市空家等対策計画作成協議会委員、神戸市空家活用中古住宅市場活性化プロジェクトメンバー、神戸市すまいまちづくり公社空家空地専門相談員、宅地建物取引士法定講習認定講師、不動産保証協会法定研修会講師の他、民間企業からの不動産情報関連における講演依頼も多数手がけている。2017年兵庫県知事まちづくり功労表彰、2018年国土交通大臣表彰受賞・2020年秋の黄綬褒章受章。

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