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大阪で住宅3棟が崩壊 「危険な擁壁」は望まなくても手に入ってしまうケースが(2/3ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/08/09

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つまり、今回の映像からは、その様子がほぼ見てとれるかたちとなっている。そのうえで、この西成の現場の裏込め土を流出させたであろう原因については、現在、いくつかの見方が出てきている。

それら各々については、関係者間で対立もありそうなのでここでは紹介を省くが、基本的には裏込め土の流出というのは、主に水によって起こる。 何らかの理由による地下水位の上昇、あるいは雨水や漏水の侵入、滞留などが原因で、土が緩み、流動化するかたちだ。

ともあれ、今回の現場で実際のところ何が起きていたのかについては、詳しい調査ののち、行政からの発表がなされることになるだろう。

いまは基準に適わない空積み擁壁

ところで、この大阪・西成区で崩れた「空石積み」の擁壁だが、そもそもこれは擁壁としては現在の基準に適わない古いかたちのものだ。

現在、擁壁の基準については、宅地造成等規制法施行令によって、以下のように定められている。

「鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造または間知石(けんちいし)練積み造その他の練積み造のものとする」(第6条)。

なお、ここでは後ろの方に2度出てくる「練積み(ねりづみ)」という言葉に注目してほしい。

石や間知ブロックなど、本来バラバラの素材を積み上げて擁壁を造る際、コンクリートなどでそれらのすき間(目地)や裏面を固め、全体を一枚板のようにするやり方をこのようにいう。

そこでいうと、今回の西成の擁壁は練積みではなく空石積み=空積みだ。目地や裏面が固まっていない。

この空積み擁壁は、練積み擁壁と比べると、さきほども述べたとおり、背後に水の侵入を受けた際や、地震の揺れが加わった際などは基本的にもろい。加えて、建造するにあたっての技術的難度が高い点もリスクとなっている。 

すなわち、高難度=施工に問題が生じる可能性も高いということで、これら色々の理由から、現在の宅地造成等規制法上ではこれが認められないかたちとなっているわけだ。 

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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