ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

持続可能な都市再生は可能か 都心で進む、既存インフラを活用したウォーキングロード化計画(2/3ページ)

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

歴史と文化を感じさせる「築地・竹芝」の歩行者ネットワーク

まだ具体的な報道はないが「築地・竹芝間歩行者ネットワーク」の構想から、その中身について紹介していこう。

今は築地市場跡地の再開発に合わせ、事業に着手したばかりだが、都はこの構想によって、築地市場跡地のスーパー堤防やテラス、浜離宮の防潮堤を遊歩道化し、竹芝に誘導することを狙う。

築地周辺部をつなぐ歩行者ネットワーク形成としては、このほかにもスーパー堤防、防潮堤の活用が検討されている。これは「築地周辺の歴史資産や文化資産、特徴ある地域を結び付け、連携を強化することができるよう、楽しく周遊できる歩行者のネットワークなどを形成する」(都の築地まちづくり方針)ことが目的とされる。


築地市場跡地 撮影/立木 信

旧築地市場の南西側には浜離宮恩賜庭園、竹芝地区や浜松町の再開発が進む。北側には、築地本願寺や歌舞伎座、新橋演舞場があり、現在、聖路加国際病院がある中央区明石町周辺は、明治維新直後は外国人の居住区域、いわゆる外国人居留地だったこともあって、歴史や文化的資源がある地域でもある。

そこで都は「こうした周辺のさまざまな資源とのつながりを重視し、より価値を高めていくため、歩行者の回遊性を高める必要がある」として、この夏から築地市場跡地の隅田川に面するスーパー堤防の前段の既存の桟橋等の撤去工事を進めている。

新設するスーパー堤防の前面は、観光名所になるように、通常より幅が広いテラスを設ける。これらのスーパー堤防の本格工事は、後背地の開発に合わせて、一体的に整備される計画だ。


都内で進められる歩行者ネットワーク ※グレーの箇所が歩行者ネットワーク 図/編集部

昔と今が混在する浜離宮周辺

浜離宮恩賜庭園南東側の防潮堤には、周遊船が通過できる水門が2つある。この水門は水上バスの船着き場へとつながり、工事後も浜離宮への横づけを続けるなら、水門と遊歩道の両立、場合によっては遊歩道のルート変更も必要となる。

もともと浜離宮は徳川将軍の鴨狩り場で、茶室などもあったところだ。今はその背後には汐留(旧国鉄用地)の再開発で高層ビルが林立している。海側から見ると手前に江戸時代を思わせる景色、そして背後には高層ビル群の景色といった、昔と今のコントラストが如実にあらわれる場所だ。


遊歩道化される浜離宮庭園前の防潮堤 撮影/立木 信

また、浜離宮の南に位置する竹芝・浜松町では、東急不動産と鹿島建設が浜松町駅~竹芝駅(ゆりかもめ)~竹芝埠頭を結ぶ「ペデストリアンデッキ」(歩行者デッキ)の供用が開始された。

これは都有地活用事業「都市再生ステップアップ・プロジェクト」の目玉事業のひとつで、国家戦略特区の特定事業(都市計画法等の特例)に認定されたものだ。ここは「ウォーターフロントの再生」を掲げ、海や竹芝埠頭、旧芝離宮恩賜庭園などの公共空間を活用して、地域のにぎわいを作る活動を進めるのだという。

次ページ ▶︎ | 銀座から築地、浜離宮 新しい遊歩道を歩いて散策

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

経済アナリスト

マクロ経済面から経済政策を批評することに定評がある。不動産・株式などの資産市場、国や自治体の財政のバランスシートの分析などに強みを持つ。著書に『若者を喰い物にし続ける社会』(洋泉社)、『世代間最終戦争』(東洋経済新報社)、『地価「最終」暴落』(光文社)などがある。

ページのトップへ

ウチコミ!