1964-2020東京五輪へと続く道路開発2――昭和の“遺構”を使った銀座・築地の一体開発とは?(3/3ページ)
立木信(たちき まこと)
2021/06/16
銀座の高速KK線、2キロの高架遊歩道に転用へ
首都高速の道路図を見ると都心をぐるりと回る環状線のさらに内側、京橋~西銀座~汐留JCTを結ぶ路線があることが分かる。実際の道路は東京駅から新橋間を新幹線と並行して走る道路である。
実は、この道路は首都高速とつながってはいるが、1951年に財界人23人によって設立された「東京高速道路株式会社(以下=KK線)」という別法人によって銀座の交通量緩和のために銀座を囲む外堀、汐留川、京橋川を埋め立てて作られた全長2キロ程度のミニ高速道路である。ミニ高速道路なので、耐荷重やカーブ区間の道路幅の関係から、大型車の通行は禁止だ。道路完成後、所有権は東京都に移った。
KK会社は「銀座インズ」「ファイブ」などの高架下商業空間も経営してきたが、2年前に同社は、道路を保有する都から30年の定借契約を更新している。
高速の下は店舗が入るKK線
道路が通行できるようになって50年以上が経ち老朽化が目立つKK線は、補強して大型車も通れる首都高と同じ仕様(規格)にして高速道として継続利用することも一時、検討された。
しかし、補強に大金がかかるうえ、コリドー街などの高架下商店街が長期の工事で使用できなくなるため、店舗への営業補償もあって工事を断念。数年前から、水面下で、遊歩道化される(緑のプロムナード構想)が検討されている。
そうなるとKK線は高速道路として使えなくなるが、首都高速道路の日本橋区間の地下化に伴う事業で、銀座を通過する首都高を地下化(トンネル化)される予定だ。
とはいっても計画通り完成するのは、10年程度、あるいは、それ以上要すると見られ、着工時期など具体的なスケジュールは固まっていない。
モデルはニューヨークの「ハイライン」
さて、KK線が遊歩道化されれば、高架式の高速道路の跡地を利用した歩行者道は日本初のこと。構想は鉄道の廃線跡を利用したニューヨーク名物の「ハイライン」が手本となる。
ニューヨークのハイライン/©︎bwzenith・123RF
ニューヨークのハイラインは、各国の都市再生・都市計画の教科書によく載るほど有名で、日本の建築家、学者、ゼネコン社員らが常時、見学に訪れているという。
銀座のKK線がニューヨークのハイラインのように完成すれば、浜離宮庭園も近く、銀座と築地の連結を象徴する新たな観光資源となりうるだろう。
しかも、現在のKK線下の店舗は振動や騒音があるため、その分、賃料が安いようだ。だが、空中公園の真下にならばプレミアムが付き、入居希望者が増える可能性もあり、銀座活性化の起爆剤としても期待される。
一連の計画のプロジェクトをつなぐ核として、築地においては、松竹の本社ビル(東劇ビル)、新橋演舞場の入るビル(旧日産自動車本社別館、現在は野村不動産が所有)、旧電通本社ビル群(住友不動産が買収)に至るエリアの再開発が構想されている。
解体される築地の丹下ビル
昭和の東京五輪の“遺構”が復活されようとする一方で、昭和に作られた文化財級という声もあった築地の丹下ビル(旧電通本社ビル)などが解体される――そして、令和の新しい街並みが作られていく。
この記事を書いた人
経済アナリスト
マクロ経済面から経済政策を批評することに定評がある。不動産・株式などの資産市場、国や自治体の財政のバランスシートの分析などに強みを持つ。著書に『若者を喰い物にし続ける社会』(洋泉社)、『世代間最終戦争』(東洋経済新報社)、『地価「最終」暴落』(光文社)などがある。