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〜この国の明日に想いを馳せる不動産屋のエセー〜

なので私はこう言い放った…「メルカリで家は売れない」(2/2ページ)

南村 忠敬南村 忠敬

2021/05/17

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これ、結構深い意味があるんです。

如何なる産業分野でも、ITイノベーションを巻き起こすためには事業者間における格差の解消が課題となる。DX社会を目前にしてもなお、旧態依然の業態から抜け出せない事業者は一定数残る。

※DX(デジタルトランスフォーメーション)/「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念のことで、2004年にスウェーデン・ウメオ大学(Umeå University)教授のエリック・ストルターマン氏によって初めて提唱さた。日本では、2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を取りまとめ、それを契機に産業界に広まった。

大切なのは小手先のデジタライズではなく煩雑なプロセスを簡素化すること

デジタライズは、デバイスのデジタル化を指すが、それだけではDXには繋がらない。事業者の自己満足で終わる。デジタリゼーションの波が対コロナ対策限定ならば格別、DXの流れはコロナ発症以前から進められていたわけで、単に拍車が掛かったというに過ぎない。

シンポジウムで用意されていたテーマは大きく三つ。最初の課題で大いに盛り上がってしまい、柳川先生は二つ目と三つ目のテーマを上手く混ぜてパネラーに問うた。

禁じ手だ!

「不動産流通を活性化させるために、イノベーションはどう進むのか? 描く未来像は??」と、来たから、プロップテック企業のCEO氏が自社の強みも込めて、不動産事業者向けの技術に囚われない、プレーヤー主導型のエコシステムづくりを進めて行くと語尾を強めた。しかし、私は中小零細不動産業者の代表を買って出た身であるから、技術革新の陰に埋もれるアナログ育ちを置き去りにはできない。そこで、「中小零細もDXは必要! ただし、デバイスのデジタライズを進める前に、アナログ社会が作り上げてきた不動産実務のプロセスを見直すことから始めないとダメ! 要はプロセスのデジタル化が必須条件!」と力を込めて言った。

大手不動産会社なら、資金力や組織力、ネットワークの優位を使ってデバイスのデジタル化にいち早く切り替えが可能だろう。しかし、大手であっても、不動産流通実務においてそのプロセスは零細企業と同じだ。ここは大手だ小手だと言っている場合ではなく、ユーザーニーズ(≒社会的ニーズ)を満たすために、煩雑な不動産流通の仕組みや因習、手続き、税金、法律などを見直し、必要なプロセスをデジタル化していくことが必要だと私は提唱する。そうすることで、小手先のデジタイゼーションに留まることなく、必然的にデジタライズが進み、気が付けばDXが業界全体に定着するのではないか。

国交省担当者からも、「必要な法改正は行う」との発言も飛び出した。

願ったり叶ったり。

〜この国の明日に想いを馳せる不動産屋のエセー〜
不動産「AI価格査定」という宣伝文句の裏側にあるもの

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この記事を書いた人

第一住建株式会社 代表取締役社長/宅地建物取引士(公益財団法人不動産流通推進センター認定宅建マイスター)/公益社団法人不動産保証協会理事

大学卒業後、大手不動産会社勤務。営業として年間売上高230億円のトップセールスを記録。1991年第一住建株式会社を設立し代表取締役に就任。1997年から我が国不動産流通システムの根幹を成す指定流通機構(レインズ)のシステム構築や不動産業の高度情報化に関する事業を担当。また、所属協会の国際交流部門の担当として、全米リアルター協会(NAR)や中華民国不動産商業同業公会全国聯合会をはじめ、各国の不動産関連団体との渉外責任者を歴任。国土交通省不動産総合データベース構築検討委員会委員、神戸市空家等対策計画作成協議会委員、神戸市空家活用中古住宅市場活性化プロジェクトメンバー、神戸市すまいまちづくり公社空家空地専門相談員、宅地建物取引士法定講習認定講師、不動産保証協会法定研修会講師の他、民間企業からの不動産情報関連における講演依頼も多数手がけている。2017年兵庫県知事まちづくり功労表彰、2018年国土交通大臣表彰受賞・2020年秋の黄綬褒章受章。

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