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「空き家率13.6%」をあらためて考える―― “空き家調査”から見えてくるもの(3/3ページ)

小川 純小川 純

2021/03/26

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パターン化した対策では見えてこない解決策

こうした空き家問題だが、いまだに抜本的な対策が立てられてはいない。

「個人ベースで空き家の活用方法はないかという相談はもちろんありますが、棟単位で複数のマンションを持っていて、それらが虫食い状態で空き家になってしまい、これをどうにかしたいといった相談もあります。コロナ前、うちではインバウンドへの対応をしていたので、民泊、簡易宿所、コ・ワーキング、留学生のための住まいというような外国人をターゲットにした転用で活用したいという相談が多かったのです」(川久保さん)

空き家対策にインバウンドは欠かせない。しかし、コロナ禍ではそれも厳しい。一方で地場に根ざした不動産業者でも、新たな動きが出てきていると川久保さんはこう話す。

「街の不動産屋さんというのは、これまであまり研究熱心ではなく、管理費をもらっているだけというところもありました。とくに地場の不動産屋さんは、地元の地主のオーナーさんとつながりも深い。そのため両者ともに高齢になって、とりあえずの収入があればいいと、双方ともにナアナアの関係で空き家があってもあまり気にしないということもありました。でも、ここにきて、こうした状況が少し変わってきています。なかでも不動産屋さんの世代交代がはじまってきていて、ただ管理費をもらっているだけのビジネスをしてもしょうがないということで、相談が増えているのです」

物件のオーナーや不動産事業者も空き家対策への意欲は高まっているものの、やはり対応の要になるのは自治体だ。しかし、自治体が打ち出す対策はパターン化しており、抜本的な解決策になっていないという。

「自治体の空き家対策は、最初に空き家の実態調査を行い、有識者委員会をつくります。そして、空き家バンクに登録する――ここまではどこの自治体も必ずやります。その後は、ほかの自治体で成功したものを持ち込むんですね。多いのは地元の人や高齢者の人が集まり趣味などを行う場としての活用。あるいは子ども食堂といったものです。“地域貢献”といって活動をする人を集めて、最初は補助金を出すのですが、運営するのはボランティアなので、補助金がなくなると続かなくなってしまことが多い。ただ、成功例をマネするのではなく、その地域に合ったものを、ビジネスとして成り立つようにしなくては、本当の空き家対策にはなりません」(川久保さん)

増加を続ける空き家――。その解決の処方箋はいまなお見えていない。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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