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コロナ禍でも倒産件数は史上2番目の低さ――その背景にあるもの(3/3ページ)

小川 純小川 純

2021/03/04

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お金のかからない「休業」

しかし、このコロナ禍で廃業に追い込まれている中小・零細企業は違う。

「今、事業をやめようという会社の多くは事業そのものがうまくいっておらず、内部留保もありません。また、債務超過になっている会社も多く、廃業手続きをするには債務整理をしなくてはなりません。仮に債務免除してもらったりすると、逆にその免除が利益になって課税されます。そもそもお金がないから廃業しようというのに、課税されたうえに廃業には手数料がかかるわけですから、法的に廃業しようとは考えませんよね」

こう話すのは都内のベテラン税理士だ。そこで法的な手続きに沿った廃業ではなく、お金のかからない休業を選択する企業が多いという。

むろん、実際に休業する際の手続きもいたって簡単なのである。

法人の場合は、都道府県税事務所、市区町村、税務署それぞれに休業の届出(異動届)を出すだけだ。

「実務的には債務がある場合は、代表者が会社に貸し付けているというかたちにまとめて、会社の資産をゼロにします。場合によっては法人税や消費税といった国に対する負債が残る場合がありますが、これはそのまま放置して、そこで休業させてしまいます」(前出・税理士)

こうして会社を休業させて、何もしなければ法務的には12年でその会社は解散されたものとして登記されるというわけ。つまり、廃業のようにお金をかけずに会社を清算できるのだ。

「税金についても、代表者への借入があるだけで資産ゼロでは差し押さえもできません。結果的にそれも放棄されるということになります。ただ、地方税はしつこく追ってきます。しかし、事業をやっていなと言い続けていれば、これも数年もすれば何も言ってこなくなります」(前出)

しかし、問題になるのはその会社を復活させようという場合だ。何もしていなければ遡って申告をする必要がある。

「許認可などの免許がある場合以外は、そこまでにした会社を復活させることはほとんどないと思いますが、税理士を使って遡って申告すれば、会社を新しく登記するぐらいのお金はかかるので、むしろきれいな会社を作ったほうがいいと思います」(前出)

新型コロナの影響はさまざまな業種の企業に及んでいる。そして、経済統計にはなかなか表れない「休業」というかたちで幕引きをしていく企業がひっそりと、確実に増えている。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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