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コロナ禍でも倒産件数は史上2番目の低さ――その背景にあるもの(2/3ページ)

小川 純小川 純

2021/03/04

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飲食業より厳しい業種

新型コロナが広がる要因としてヤリ玉にあげられた飲食業の厳しさについては、さまざまな場面で指摘されてきている。しかし、産業別で見ていくと違った面も見えてくる。

実際、構成比で見ると最多は飲食業や宿泊業、非営利的団体などを含むサービス業で、全体の31.4%・1万5624件、前年比17.9%増だった」。次いで建設業8211件(同16.5%、同16.8%増)、小売業6168件(同12.4%、同7.2%増)と続き飲食業の厳しい状況が見て取れる。

しかし、産業を細分化した業種別で見ると飲食店は1711件/前年比6.5%増、飲食料品卸売業が1002件/同22.6%増と、増加率では飲食料品卸売業のほうが多くなっている。さらに劇団やフィットネスクラブなどを含む娯楽業は425件/同30.3%増、社会保険・社会福祉・介護事業は629件/同13.3%増、織物・衣服・身の回り品小売業は844件/同9.3%増といずれも飲食業に比べ増加率は高くなっている。つまり、飲食業への補償が足りないと批判されているが、それ以上に補償のないそのほかのサービス・小売業の厳しさが浮き彫りになっている。

会社を畳むにもお金はかかる

新型コロナよる企業倒産がそれが抑え込まれている背景はここまで指摘してきたように補償金や無利子の融資制度などさまざまな支援策があったこともある。しかし、それ以上に倒産や廃業ではなく、「休業」というかたちで幕引きを行う会社が増えている一面もあるようなのだ。

そもそも、倒産・廃業と休業はどう違うのか。その違いを見ていく。

まず「倒産」だが、じつはこの「倒産」というのは法律的な定義はない。帝国データバンクは倒産について以下のように定義づけている。

1 銀行取引停止処分を受ける※1
2 内整理する(代表が倒産を認めた時)
3 裁判所に会社更生手続開始を申請する※2
4 裁判所に民事再生手続開始を申請する※2
5 裁判所に破産手続開始を申請する※2
6 裁判所に特別清算開始を申請する※2
※1 手形交換所または電子債権記録機関の取引停止処分を受けた場合
※2 第三者(債権者)による申し立ての場合、手続き開始決定を受けた時点で倒産となる

一方、廃業は会社や個人事業をやめることで、株式会社が廃業する場合は、株主総会で解散を決議し、その際に保有している資産や債権の整理、債務弁済を行わなくては廃業ができない。

廃業をするために具体的な作業は以下のようになる。

1 株主総会での解散の決議
2 解散・清算人選任登記
3 解散の届け出
4 社保関係の手続き
5 解散公告
6 解散時の決算書類の作成
7 解散確定申告
8 債権回収、債務弁済など
9 残余財産の確定・分配
10 決算報告書の作成・承認
11 清算結了登記
12 清算確定申告

このように廃業をするにもさまざまな手続きが必要になる。しかも、登記など費用負担も必要になる。実際の作業にあたっては司法書士や税理士などに依頼すれば、これらの報酬もかかる。

さらに廃業するためには、債務の弁済をしなくてはならない。そのため廃業できる企業は債務弁済ができるわけで、ある意味、優良企業といえるわけだ。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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