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『地面師――他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』の著者・森功氏に聞く 地面師の実態とだまされないための心構え(2/4ページ)

小川 純小川 純

2020/11/12

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まるで盗賊団 地面師グループの実態

――本書では「内田マイク」という地面師の頂点に立つとされる集団の頭目を中心に書かれているが、地面師グループというのはどのくらいあるのだろうか。

大きな地面師グループというのは都内では1990年代の終わりぐらいから6グループぐらいあります。ただ、バブル当時まで遡ると10グループぐらいあったようです。この当時は池袋グループ、新宿グループ、下北沢グループ、総武線グループなど、地価が上がっているような地域や沿線で分かれ、それぞれに頭目がいて、配下にそれぞれ役割を持った手下がいるようなかたちでした。こうしたグループが90年代終わりから2000年代に入って一斉に摘発され、その連中が刑務所から出てきて、頭目のなかには、引退したものがいる一方で、積水ハウス事件の中心人物である内田マイクように再開した連中もいるわけです。

そして、東日本大震災以降、とくに都心では地価が上がりはじめ、マンションの売れ行きが好調なため、マンション用地が不足していることに目をつけてかつての地面師連中が復活し、それに新しい若いメンバーが加わってグループを形成してきたというようなことでしょう。

――地面師たちは10人ほどのグループで行動し、それぞれが役割を持つ。その様はまるで鬼平犯科帳に出てくる盗賊団のようだ。その実態とはどういったものなのか。

メンバーがいないと成立しないというか、それぞれに役割があるので地面師グループには最低でも5~6人の人数が必要です。グループには、ターゲットの土地を探してきて、犯行計画を立てる主犯格のボス。地主などに“なりすまし”の演技指導をする「教育係」、なりすまし役を見つけてくる「手配師」と、パスポートや免許証などの書類を偽造する「印刷屋」や「道具屋」と呼ばれる連中。そのほかに振込口座を用意する「銀行屋」、さらには法的手続きをする弁護士や司法書士の「法律屋」、それに地主などになりすます役割というメンバーで構成されます。積水ハウス事件のような大きなものでは16人が関係していました。昔はこうしたメンバーも固定されていたけれど、いまはその都度メンバーを集めるようなスタイルになっています。

――不動産の人気スポットというと、千代田区、中央区、港区が思い浮かぶ。地面師たちが狙う土地というのはどういったものか。

住宅地でも結構狙われる土地があります。本でも書いている渋谷区富ヶ谷、世田谷区、杉並区といった住宅街、墨田区東向島といった下町などいろいろです。今回の取材でいろいろ土地を見ましたが、駅近の広い土地でも誰も住んでいないようなボロボロの家があるところは結構多いんですね。

また、いわく付きの土地というのも狙われやすい。積水ハウスがだまされた五反田の土地も、地上げ業者が入れ替わり立ち替わり出入りしていたけれど、地主が「売らない」と言っていたものでした。でも、住んでいた地主がいつの間に近所でも見かけないようになって、そのころから地面師たちが登場しています。彼らは手始めに隣接していた同じ地主が持っていた月極駐車場と契約し、地主と接触。地主の個人情報や動向を調べていました。そしてなりすまし役を仕立て上げました。


地面師詐欺事件の舞台となった五反田の土地(写真/編集部・2019年1月に撮影)

とくに最近は地主も高齢になって入院したり、施設に入ったりして住まなくっているところも狙われやすい。なりすましは、本人がどこにいるかわからないほうがいいわけで、所有者の所在がわからないとなればなおさら好都合です。こうした情報は、新橋とかの喫茶店などでブローカー同士が情報交換しています。また、内田マイクなんかは独自のネットワークを持っていて、そうした土地情報が集まってきていたようです。その情報をもとに現地を見に行ったりして、意外と地味な作業をやっています。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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