新型コロナ後、インバウンドの考え方は ガラリと変わる(2/4ページ)
小川 純
2020/06/29
インバウンドのリスク分散をどう図るか
そこで必要なことはやはり、お客さんのリスク分散ですね。日本人も外国人も、あるいは外国人も国ごとに分けるとか、そういった来日客の分散というのはとても重要です。
とはいえ、今回の新型コロナのように外国人はもとより、日本人客もダメということはこれまでなかったものです。そのため従来通りのものではなく、新たな取り組みが必要になっています。
例えば、星野リゾートなどでは、3 密(密閉・密集・密接)を防ぐために、ワンフロアを1ファミリーに限定するなど、ゆったりとした空間を少人数で使っていただけるようなプランを作ったりしています。また、地方のある旅館では、リモートワークをゆっくりと温泉に入りながら取り組みたい方々向けのプランを作り、新たな需要を掘り起こしています。とはいっても、売上的には通常の規模にはならないと思うのですが、多少なりとも今の状況下でも稼ぐ手段を探っているところが増えてきています。
さらに最近では“未来のチケット”の販売を行っている宿泊施設や飲食店も増えています。その販売方法も単に前売り予約チケットを売るのではなく、クラウドファンディングを活用するなど手法もさまざまです。
前売り予約ということで料金割引という部分も多少ありますが、それよりもいろいろなプランを付け加えるものが多いのが特徴です。具体的には、食事の品数を増やしたり、オリジナルのTシャツを付けるなど金銭に換算できないものもあり、現時点で事前にキャッシュを払ってくれてありがとうという、事業者の感謝の気持ちを盛り込んでいるところが多いのが特徴です。
——これらの新しい動きを踏まえて、インバウンド、なかでも宿泊業を行ううえでの注意点とはどういったことか。
こうしたさまざまな取り組みを行っている事業者は、お客さんとの絆というものを大切にしています。そんな方々とお話をすると、エアビーアンドビーやエクスペディアなどOTA(OnlineTravelAgency)、いわゆるインターネットの予約サイトだけに依存してしまうと、事業者側は顧客情報を蓄積できません。そのためこうした危機的状況に陥ったときにダイレクトに顧客に対してキャンペーンを打ち出したり、気持ちを伝えたり、「大丈夫ですか」という客へのお見舞いを送ろうと思っても、送ることができません。
なかには宿泊されたお客に会員になってもらって、メールアドレスなどの登録をしてもらっているところもありますが、これは少数派。お客の90%はOTAからの送客で成り立っていたところもあって、それに安心してしまって、「新型コロナウイルスで気付かされた」と反省している事業者もいます。まずは自分たちオリジナルの顧客管理を行うことがとても重要です。
この記事を書いた人
編集者・ライター
週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。