ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

インドでの新型コロナ感染爆発とヒンドゥー教の関係(2/3ページ)

正木 晃正木 晃

2021/05/13

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

インド人同士の一体感とは

民族構成もさまざまだ。

北方から中部にかけては、今から3000年くらい前に中央アジアの西部からやってきたアーリア系の民族が主流を占めている。南の方はそれ以前から居住していたドラヴィダ系の民族が多い。ヒマラヤ山脈にはモンゴロイド系の民族もいる。

この通り、インドはまさに多種多様の地なのだが、それでいて不思議なことに一体感も強烈にある。

例えば、各地方にはいわゆる「お国自慢」があって、自分が住んでいるところほどいいところはないと言いつつ、ほかのところはみな「よくないところだ!」と悪口を言ってはばからない。ところが、そこに私たちのような外国人が口を挟むと、「あなたにそういうことを言われる筋合いはない。インドを馬鹿にするな!」と叱られてしまう。

つまり、インド人が互いの悪口を言うのは許されても、外国人がインドのどの地方であれ、悪口を言ってはならないのである。

ヒンドゥー教の存在が1つの国家としての“絆”

バラバラで、しかも1つ――。この不思議な関係を支えているのは、いったい何か。答えはヒンドゥー教である。

ヒンドゥー教は二層構造をもっている。第1層は、ヒンドゥー教徒全体を統合する層。第2層は、第1層のなかに含まれていて、地方ごとの文化的な伝統として存在する。研究者によっては、前者を「大伝統」、後者を「小伝統」と呼ぶ。イメージとしては、巨大な円蓋が、その下に、無数の小さな円蓋を覆い尽くしている構造である。この構造を理解しないかぎり、インドは理解できない。

次ページ ▶︎ | やむにやまれない祭礼の開催

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

宗教学者

1953年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本・チベット密教)。特に修行における心身変容や図像表現を研究。主著に『お坊さんのための「仏教入門」』『あなたの知らない「仏教」入門』『現代日本語訳 法華経』『現代日本語訳 日蓮の立正安国論』『再興! 日本仏教』『カラーリング・マンダラ』『現代日本語訳空海の秘蔵宝鑰』(いずれも春秋社)、『密教』(講談社)、『マンダラとは何か』(NHK出版)など多数。

ページのトップへ

ウチコミ!