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賃貸の火災保険・家財保険は自分で入らないと割高に? 見過ごすと怖いリスクも解説

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イメージ/©︎terovesalainen・123RF

賃貸入居の際「保険」加入はいまや当たり前

賃貸住宅を借りる際、保険に加入することはいまや当たり前の常識となった。不動産会社(仲介会社、管理会社)で契約手続きをする過程で、ほとんどの人が同時に保険への加入手続きも行っていることだろう。

ちなみに、この保険は「火災保険」あるいは「家財保険」と呼ばれることが多い。一方、不動産ポータルサイトの画面上では「住宅保険」「損保」などと書かれている。

そこで、知らない人は覚えておこう。上記の呼び方は、実はどれも的を射るものとはいいにくい。例えば、保険会社自身はこんな正式名称で呼んでいる。

「賃貸住宅入居者総合保険」
「賃貸住宅居住者総合保険」
「賃貸家財総合保険」
「家庭総合保険」……

ほかにも会社ごとに呼び方がありそうだが、ポイントは見ればすぐに気が付くだろう。「総合保険」の文字がいずれにも付いていることだ。

つまり、これらの保険は賃貸住宅を借りて住む人が被る可能性があるリスクの多くを「総合的」にケアし、サポートするものだ。

「火災保険=火災への備え」「家財保険=家財への補償」はもちろんだが、それに限ったものではない。むしろ重要な部分はこれら以外にあるといっていい。

「借家人賠償責任補償」と「個人賠償責任補償」だ。

 

「借家人賠償責任補償」と「個人賠償責任補償」

借家人賠償責任補償とは何か。これは、賃貸住宅の入居者=借家人が、その賃貸住宅の貸主(オーナー、大家)に対して負うことになった賠償責任への補償をいう。

典型的な例を挙げよう。「アパートの自室でうっかり火事を起こし、部屋の内側を焼いてしまった——」だ。アパートはオーナーの大切な財産だ。入居者には損害を賠償する責任が生じる。それが、借家人賠償責任補償によって補償されることになるわけだ。

次に、個人賠償責任補償、こちらも典型的な例を挙げよう。

例えば「洗濯中に洗濯機のホースが外れて水が階下に漏れた。下の部屋の入居者の衣服などを汚し、賠償を求められた」というものだ。個人賠償責任補償は、同じ物件に住むほかの入居者など、広く他人に対する賠償責任を補償するものとなる。

以上、2例を挙げただけで、誰もがすぐに理解できることだろう。いざ事故発生の際、オーナーも、入居者ひとりひとりも、被害者または加害者として重い金銭的ダメージを背負うことはぜひとも避けたいものだ。さらには、互いに賠償を巡って争ったり、それを目の前で見せられたりも、できれば避けたいところだろう。

そのために、現在、賃貸住宅オーナーや管理会社は賃貸住宅入居者用の総合保険(賃貸の火災保険・家財保険)への加入を入居者に対し必ず求める流れとなっている。

なお、90年代くらいまではこうした保険への加入なしでの入居は実は普通に行われていた。そのため、入居者もオーナーも気付かないうちに大きなリスクを負っていた。

つまりは、賃貸住宅入居者用の総合保険(賃貸の火災保険・家財保険)が世の中に広まり、知られることによって、こうしたリスクの存在に人々が遅れて気付き出したというのがここ20年程においての実態だ。そのうえで、この保険に加入することは、いまや「チンタイの常識」であり「必須」ともなったわけだ。

 

「保険は自分で選ぶ」を拒絶するオーナーは少ない

以上、ほとんどのオーナーや管理会社にとって、賃貸住宅入居者用の総合保険(賃貸の火災保険・家財保険)に対し、求めるものは現在ひとつとなっている。「借家人賠償責任補償」と「個人賠償責任補償」が保証されることだ。

となれば、これらがきちんと押さえられているのならば、保険会社はどこでもよいと判断するオーナーや管理会社があって当然ということにもなる。

そのうえで、不動産会社(仲介会社、管理会社)が入居希望者に示す保険料は概して高くなりがちだ。理由は、それらが多岐にわたり補償内容の手厚い、いわばフルスペックな損害保険であることが多いためだ。しかし、一方で最近は補償内容がシンプルで保険料の安い、少額短期保険業者による商品もさまざま登場している。加えて、損害保険会社の商品ながら内容をスリムに抑えた、やはり保険料の割安なものも販売されている。

そこで、近年入居希望者のなかには、そうした商品を自ら選んで契約したい旨を申し出る人が増えている。また、すでに入居中であっても、契約更新などを機会に保険を自ら切り替えたいとする例もたびたび聞かれるようになってきた。

一方、こうした申し出に対し、オーナー側がこれを拒絶するような例はあまり聞かれない。理由は、さきほども述べたとおり「借家人賠償責任補償」と「個人賠償責任補償」が、補償金額の面などで十分整っていれば、ほかに異存はないケースが多いからだ。

ただし、ここで一旦立ち止まり、慎重に考えた方がよいのは実は入居者の側となる。保険料の安さだけに注目していると、思わぬリスクを見逃してしまうことがあるからだ。

 

水災や地震は? 家財が多い人やファミリーも要注意

不動産会社が用意した賃貸住宅入居者用の総合保険(賃貸の火災保険・家財保険)は利用せず、保険料の安い商品を自ら選んで加入することでのメリットが多いのは、主に単身者となる。

理由は、家財の量が概して少なく、それらの金額も高額にはならないことが多いからだ。つまり、家財への補償を大きく抑えられる。 

そこで、例えば若い入居者から「家財補償100万円、借家人賠償2000万円、個人賠償1億円、保険料年額4000円の保険に自ら入りたい」と、言われれば、お金持ちのオーナーならば「家財たった100万で間に合うの?」と、驚いたりしながらも…… 「部屋にはテレビもステレオも無いし、家電は全部ディスカウント品。家具は組み立て式の安いやつだけなので」との理由を聞き、「そうか。それがいまの子か」と納得しつつ、「借家人賠償2000万円。うちのワンルームなら十分だろう」と、首を縦に振るはずだ。

しかし、これがファミリーで家財が多い場合など、補償をどこまでにするかはじっくり考えた方がいい。さらにはその範囲だ。当然のことだが、保険料が安い商品の方がタイトだったり、追加できる特約が少なかったりしがちとなる。

一方で、補償範囲が広く手厚い、主には保険料の高いフルスペック型の商品だと、例えば水災(河川氾濫等による浸水など)での家財補償が付いていたり、地震保険を追加できたりもする。加えて、部屋のカギが盗まれドアの錠を交換しなければならなくなったときの補償といった、気の利いたサポートも用意されていたりする。

そこで、想像してみよう。例えばあなたが子どものいるファミリーの入居者だとして、物件は水害ハザードマップで洪水の危険が示される場所に建っている……部屋には大型テレビのほか、テレワーク用の高性能パソコンや周辺機器一式も置いてある……よって、地震も心配だ……。 

リーズナブルでシンプル・安価な保険をよく吟味もせず選ぶわけにはいかないケースも出てくるはずだ。(ただし、低額の保険でも水災補償付きのものがあるなど、競争のなか各社の工夫はさまざま、流動的ではある)

ちなみに、さきほどの「借家人賠償責任補償」と「個人賠償責任補償」についても、保険によっては差が出てくる。 

例えば、あるリーズナブル&シンプルな保険では、借家人賠償責任補償について「火災、破裂、爆発、給排水設備に生じた事故に伴う水ぬれによって、借りている建物に損害を与え、貸主に対し法律上の損害賠償責任を負った場合」と、具体的に条件が規定されている。

一方、保険料の高いある保険では、「被保険者に責任がある不測かつ突発的な事故によって、借りている住宅を損壊し、貸主に対して法律上の損害賠償責任を負った場合」となっていて、条件が具体的には限定されないかたちだ。

同様に、個人賠償責任補償についても、前者(リーズナブル&シンプル)のある保険では、補償限度額は1000万円。後者(保険料が高い)のある保険では3億円などといった差がついてくる。

 

無保険入居者にはなるな!

もうひとつ、不動産会社が用意した賃貸住宅入居者用の総合保険(賃貸の火災保険・家財保険)には入らず、入居者側が保険を自ら選んで加入する場合、気を付けたいことがある。それは更新(継続手続き)だ。

不動産会社が用意する保険の場合、契約期間は多くが建物賃貸借契約と同じ2年となっている。つまり、部屋の更新ごとに、管理会社や仲介会社が保険の更新もセットで案内してくれることが多い。

一方、保険を入居者自らが選んで加入した場合、管理会社も仲介会社も、さらにはオーナーも、やりとりには介在しない。なおかつ、リーズナブル&シンプルな保険では、保険期間が1年であることも多いので注意が必要だ。うっかり更新漏れを起こし、無保険期間が生じることのないよう、ぜひ気を付けたい。 

もっとも、実際には保険料の支払いは更新ごとにクレジットカードによる引き落としで行われることが多い。その場合、もちろん事故は避けられやすい。

しかしながら、ほかの支払い方法を選んでいたり、カード自体の契約に変動が生じたりが原因で、不測の事態が起きるなどしないようしっかりと注意はしておきたいものだ。

そのほか、ほぼ蛇足になりそうだが付け加えよう。

 

一応、気に留めておいてほしいことがある。この記事の最初の方で述べた「90年代くらいまでは保険への加入なしでの入居は普通に行われていた」——の部分だ。最近はほとんど見かけなくなったが、少し前まで、地場の古い仲介会社などではそのようなかたちで仕事を続けているところもたまに見られた。 

入居希望者の方で気付かずにいると、そのまま無保険入居者になってしまう。危うい流れだ。


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この記事を書いた人

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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