ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

「賃貸」業界のイメージを下げる悪習? 「鍵交換費用」を入居者はなぜ払わされるのか(2/3ページ)

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

民法の示すオーナーの義務

そこで、今度は法律を紐解いてみよう。民法だ。第601条にこうある。

(民法第601条)
「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。」

つまり、ここには大事な2つのことが書かれている。

「入居者は、賃料を支払うこととひきかえに、物件を使用し、収益する権利をもつ」

「賃貸オーナーは、賃料を貰うこととひきかえに、入居者に物件を使用させ、収益させる義務を負う」

この2つだ。

そこで、上記に書かれている2つの言葉に注目したい。「使用」と「収益」だ。これらは併せて「使用収益」とよくいわれるが、その意味するところとは何だろう? それは、賃貸住宅にあっては、入居者がその物件を住居として、安全・安心かつ平穏に暮らす場所にできるということだ。これは、要は“テッパン”といっていい解釈で、異論のある人は日本の法律の専門家のなかにはおそらくひとりもいないだろう。

そのうえで、この「使用収益=入居者が安全・安心かつ平穏に暮らせること」が成立し、維持されるために、オーナーには同じ民法によりこんな義務が課されている。

(民法第606条1項)
「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。(以降略)」

入居者が物件を使用収益できる状態をまかなうため、オーナーに対しては、それが損なわれた場合の修繕義務が課されているわけだ。例えば具体的には――

「部屋に雨漏りが起きたり、給湯器が壊れたりして入居者が困っているならば、オーナーはすぐに直してあげないとダメですよ」

――などということになるのだが、ここで考えてみたい。

誰が合鍵を持っているかも知れない、安全・安心に欠けた状態の鍵なのだ。それを新しい鍵に取り換えてやる……そのことは、まさに上記にいう使用収益の成立・維持に該当しているのではないのか?

例えば、1階テラスの錠が緩んでいて防犯上不安なことと、玄関ドアの鍵に合鍵が存在する可能性があるため同じく不安なこと。両者はもしかすると同じことなのではないか? 仮に両者が同じであり、それが使用収益の毀損にもひとしく該当するとするならば、改善するための対価は当然のこと鍵交換費用ではない。上記民法に定めるとおり、それは「賃料」との引き換えとなる。

次ページ ▶︎ | 出ていく人に払わせるのはおかしい――国交省

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

ページのトップへ

ウチコミ!