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一戸建て賃貸の庭の草刈り 入居者・オーナー、どちらの仕事なのか?(2/2ページ)

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入居者の注意義務ではなく、オーナーの修繕義務では?

他方、こう思う人もいるかもしれない。

「一戸建て賃貸の庭で伸びた草を刈ることで、家賃を払ってくれている入居者へ不都合や不快感の無い生活を提供するのは、オーナーとしてのそもそもの義務なのでは?」

まさにこの記事の冒頭に示した入居者の声だ。なおかつ、そんな意見をもつ人が法的根拠を挙げるとすれば、それは民法601条および606条ということになるだろう。

(民法第601条)
「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと(略)を約することによって、その効力を生ずる」

(民法第606条1項)
「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない」

いかがだろうか。たしかに「オーナーとしてのそもそもの義務なのでは?」にも、一理ある感じがしないでもない。

しかしながら、庭の草刈りはあくまで上記(606条1項)にいう、賃貸人が義務を負う「修繕」ではなく、物件を占有する入居者が行うべき「管理」の一部であるとするならば、この話は当然ながらさきほどの善管注意義務に立ち返ってしまう。

とはいえ、それでもどこか釈然としない点が残るとすれば、そこには時代や世代による感覚差が生じている可能性もあるだろう。よって、このテーマはおそらく将来に向けては、興味深い課題のひとつとなっていくはずだ。

すなわち、「大家さんにお借りしている家」ならば、庭の草刈りは何となく入居者がするのが当たり前の雰囲気だ。

だが、「投資家が賃貸事業を経営している物件」となると、そこで提供されるサービスへの対価を支払う「客」として、入居者が受け取る感覚は同じものになるだろうか? おそらくは微妙に変わってくるような気もしてくる。

結論は「ガイドライン」にも

結論に戻ろう。一戸建て賃貸での庭の草刈り、誰がやるのかを契約で定めていないのならば、それを行うべきはオーナーではない。入居者だ。

特別な形態等の例を除き、いわゆる一般的な「庭付き一戸建て賃貸」では、庭は契約に明示されなくとも賃貸借される目的物の一部であり、そこでの草刈りは賃借物に対する善管注意義務を負う入居者が行わなければならない。これは、目下のところ不動産業界および市場における了解事項だ。

そのため、国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にも、入居者に原状回復義務が発生するケースのひとつとしてその旨が明記されている。

「●戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草 ……(考え方)草取りが適切に行われていない場合は、賃借人の善管注意義務違反に該当すると判断される場合が多いと考えられる」

なので、一戸建て賃貸を借りている人が、「庭の草が伸びてボウボウだ!大家さん刈りに来て」と頼んで、オーナーが駆け付けてくれたならば、契約上その責務がオーナーに無い以上、それは法的義務を超えた手厚いサービスということになる。

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この記事を書いた人

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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