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告知期間は賃貸でおおむね3年「人の死の告知に関するガイドライン」のポイント(2/2ページ)

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告知の期間はおおむね3年

注目したい基準だ。今回のガイドラインでは、前述までに示した、告知しなければならないケースの死が発生・発覚してからおおむね3年が経過した場合、不動産会社は、賃貸物件に限り、原則これを告知しなくてよいこととしている。

つまり、過去にその部屋で自殺や他殺があっても、それが3年半や4年以上前のことであれば、賃貸では告知はされなくなる。

ただし、ここにも但し書きがあり、「事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではない」となっている。事業者それぞれが、あとあとのリスクも勘案しながら、そのあたりを判断していくことになるはずだ。

なお、特筆したいのは、以上によって貸主側事業者は、これまで時折行われていたとされる事故物件に関してのある“テクニック”を使えなくなったことだ。

それは、告知しなければならないような事故が生じた部屋に、その後ほんの短期間でも人が住んだ場合、以後は告知をやめる判断を指す。すなわち、今回のガイドラインに従うかぎり、事故後入居者が何人入れ替わろうと、おおむね3年を過ぎない間、告知義務は消えずに残り続ける。

よって、いわゆる事故物件のロンダリングはできなくなった。わざと短期の居住者を連れて来て、その者を低家賃、あるいは有償で部屋に住まわせたのち、告知をやめるといったやり方だ。

もっとも、こうした行為の存在は、ウワサにはよくのぼっていたものの、現実として実行例はそれほど多くなかったように思われる。

不安ならば尋ねよう

以上のとおり、今回のガイドラインは、賃貸住宅を借りる多くの入居者の目線からは、一部頼りになったり、いまひとつだったり、評価の入り混じるものになっていることだろう。

ただし、そのうえで、ガイドラインにはこのように書かれてもいる。

「人の死に関する事案の発覚から経過した期間や、死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、その社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等には――(略)――宅地建物取引業者は――(略)――調査を通じて判明した点を告げる必要がある」

つまり、「気になるなら尋ねろ」ということだ。

さきほどまでに挙げた「告知しなくてよい」ケースにあてはまる場合でも、不動産会社は、客に問われたならば、それを隠してはいけないのだ。知っている範囲のことを正直に告げなければならないことになっている。

宅地建物取引業者の情報収集には限界がある

最後に、もうひとつ注意を記しておきたい。

このガイドラインが呼びかけている「相手」のことだ。冒頭にも述べたとおり、それは宅地建物取引業者=不動産会社だ。彼らは取り扱う物件のことについて多くを知っているプロだが、場合によっては把握しきれていないこともある。

なおかつ、管理、仲介、代理、自社貸主といった、物件を扱う立場の違いから、そこには大小の差も生じてくる。宅地建物取引業=不動産業という仕事の仕組み、さらには物件情報が流通する仕組み上、それは致し方のないこととなる。

ちなみに、今回のガイドラインでは、不動産における人の死に関する事案について、彼ら不動産会社がどこまで調査すればよいかについてもガイダンスされている。妥当な内容とは思われるが、漏れのない完璧なものではない。

以上は、事故物件がとても気になるユーザーが、心得ておきたいことだ。

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この記事を書いた人

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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