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結局のところ「敷金」は返ってくるのか? 答えは契約書に書いてある(3/5ページ)

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2017年「民法改正」

さらに、2歩目が先頃の民法改正となる。2017年に成立、2020年4月に新たな「改正民法」が施行された。さきほどのガイドラインに示された考え方は、この中にそのまますっぽりと引き継がれた。

つまり、「通常損耗や経年変化については、借主は原状回復を負担する必要はない」と、民法も規定したということだ。

そこでいうと、さきほどの「ガイドライン」は、国がこれを示し、賃貸住宅関連業界内外にもかなり浸透したとはいえ、あくまで指針に過ぎなかった。

しかしながら、民法の方はこれとはレベルが違い、国の基本的な法律の代表たるひとつだ。

つまり、この民法改正によって、上記の考え方は明確に「国民の約束ごと」となった。これは本当に大きな、入居者保護のための2歩目といっていい。

ところがだ……

クリーニング特約の広がり

ガイドラインの制定と普及、続く民法改正と、原状回復・敷金トラブルに関しての入居者保護が国のリードで進められていくなか、実際の現場では皮肉なことが起こっていた。

クリーニング特約の広がりだ。

国の主導によって、退去していく入居者に対し、原状回復にかかわる費用を求めづらくなっていくのに従って、それを初めから入居者負担とする旨、契約のなかで先に決めてしまう特約の設定が、居住用建物の賃貸借契約にどんどん増え出したのだ。

結果、さきほど示したように、現在はこの特約付きの物件が非常に多い。

そのため、たとえ細心の注意を払いつつ部屋をきれいに使っても、あるいは入居期間が短くとも、まさに問答無用で入居者が原状回復費用の一部か全てを負担させられるケースが、ひょっとするといまは昔よりも増えている。

なので、きれい好きで几帳面、過去には良心的なオーナーにも恵まれ、

「これまでに敷金が全額返ってこなかったことは一度もありません」

と、いう人でも、次にこのクリーニング特約がついた物件に入居してしまえば、ジ・エンドとなる。“記録”はおそらく途切れてしまうことになるだろう。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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