結局のところ「敷金」は返ってくるのか? 答えは契約書に書いてある(2/5ページ)
賃貸幸せラボラトリー
2021/09/28
国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
上記「保護」の1歩目となったのが「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」だ。
1998年に国土交通省が取りまとめた指針で、以降、原状回復・敷金トラブルを判断するための重要な基準となってきた。2004年と2011年に改訂が行われている。
柱となっている部分を挙げよう。
・賃貸住宅の経年変化や通常損耗の修繕は、貸主の負担
・同じく、借主の故意や過失、善管注意義務違反、通常の使用のかたちを超えるような使い方による損耗、毀損を復旧することは、借主の負担
ガイドラインはこれらを細かく例も挙げながら、明確に切り分けた。
特に、前者の「経年変化・通常損耗」をはっきりと借主の負担から除いたことで、争われがちだった判断基準が一気にスッキリしたものになった。
例えばそのひとつ、「年月を経て自然に変色した壁紙の交換費用」は、それを行いたいのならば、費用を負担するのは貸主だ。これは通常損耗であり、借主の故意や過失などで生じたものではないからだ。
すると、皆さんは「それって当たり前でしょう」と、思うかもしれない。
しかしながら、ガイドラインが浸透する以前は、実際にこれが借主側に請求され、争いが起きることがよくあったのだ。
なぜなら、オーナー側の一部は、このとき往々にして、「原状回復とは、部屋が貸し出される以前の状態、すなわち経年変化も自然損耗も生じていなかった昔の姿そのままに戻すことだ」などとし、それが一部においては「一理ある」と、解釈されていたことによる。だが、普通に見て、これはとても当たり前の理屈といえるものではない。
なぜなら、ホテルも然り、レンタカーも然り、貸衣装の店も然り。「そのためのコストも含んでのご商売をされているはずでしょ?」と、いうことに当然なるからだ。
そこで、この当たり前の理屈が普通のやり方に反映されるよう、国は、一般的には弱い立場に立つ入居者に対し「盾」をこしらえてくれた。それが、このガイドラインを構成する中心的な柱となっている。
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編集者・ライター
賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室