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「一人暮らし教育」のススメ——大学や企業は賃貸住宅に住む若者に教育をするべき?(3/3ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/08/25

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昭和の風景は望んでも戻らない

すなわち、大人は若者に対し、よく、「そんな年になって、注意されるまで分からないのか」と叱ったり腹を立てたりするが、現実はまさにそのとおりだ。

当の若者の方とすれば、「注意されるまでそれを判らずにいる」=「察知できずにいる」ことが、おそらく実際に多い。そのため、そうした機会がやってくるまでは、彼らは無邪気なまま、さほど悪気もなく自由に振る舞い続けてしまう。

しかしながら、一方でその頃には、すでに我慢に我慢をかさねていた周囲にあっては、怒りがいよいよ爆発寸前の段階を迎えている。賃貸集合住宅という緊張感漂う舞台においては、話が一気に、「怒鳴り込み」「警察に通報」といった段階にまで進んでしまうというのが、私もこれまで幾度か“修羅場”に接してきたなか、よく見られるパターンとなっている。

とはいえ、かといって昭和の昔のように、下宿先の管理人家族や近隣住人が、日常こぞって一人暮らしの若者の世話を焼き、つまづきがあればそのたびに正し、世間の物差しを垣間見させながら彼らを育てるような環境が、いまから戻ってくるわけでもない。

であれば、まさにベタだが、関係するすべての立場における幸福のために、「賃貸不動産業界は、大学や専門学校、さらには新卒採用を行っている企業などと連携して、若者を対象とした一人暮らし教育を行ってはどうか」と、いうのが、いまの私の提案だ。なお、レクチャーの内容は、生活マナー以外にも、もう少し広げてもいい。

例えば、消費生活センターのような立場に立つプロなどにも参加してもらうと、若者にとってさらに恩恵が増すことになるだろう。

これは、いうまでもなく、論理的思考が育ちきっていないがゆえに、若者がとくに巻き込まれやすい構造となっている悪徳商法被害の予防のためだ。

加えて、彼らが心の問題を抱えてしまったときの道案内=相談先の紹介などもこのカリキュラムにはあってよい。こちらは、賃貸住宅で一人暮らしをする若者が自殺をする確率が、他の年代に比べて高いとの調査結果が一部に出ていることを受けての提案となる。 

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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