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物件を見ずに部屋を決めるのはこれを読んでから――賃貸物件広告の「写真」についての大事な話(3/3ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/07/28

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写真は「切り取られて」いるものであることに注意

写真は、風景を一定の範囲内で切り取ったものだ。画面の外に外れている景色までは、当然見ることができない。

なので、例えば、物件のキッチンを写真に撮るとして、左右の壁のうち、片方に汚れが目立つとする。

すると、撮影するのがオーナー自身だろうが、管理・仲介会社のスタッフだろうが、その部分が画面に入らないようにカメラを構えるのは、やはり人情というものだ。

ベランダの風景など、特にそうなりやすい。例えば、視界の半分が隣の建物に塞がれているような場合でも、カメラの角度を工夫すれば、状況は簡単に隠すことができる。「柵の向こうは墓地」などという場合も、やはり同様だ。

さらには、利用マナーのよくない駐輪場の自転車を整列させたり、ゴミ置き場に放置された分別違反ゴミをほかに移動させたりしての撮影など、普通に行われるが、写真を見て物件を選ぶ側にとっては、これらは重要なマイナス情報の秘匿であるにほかならない。

加えて、当たり前のことだが、写真からは「音」と「におい」は伝わって来ない。

物件前面を走る道路がたとえ騒音の激しい幹線道路であっても、換気扇内部の掃除がサボられているため、部屋の中が異臭で厳しい状態になっていても、それらは写真からはまったく判別不可能だ。

行ってみたら「写真よりキレイだった!」もたまにある

さらにこのケース。意外にある。さきほどの「広告に古い写真が使われている」場合で、たまに面白いことが起きていたりする。

なんと、実際に部屋に行ってみると、写真よりもずっとキレイ!だという、そんなケースだ。なぜだろう。理由はこうだ。

1.前入居者からの退去の告知後、古い写真で広告を作成、募集を開始
2.退去後、部屋をリフォーム
3.部屋はすっかりキレイになったが、再撮影、広告の差し替えが行われていない

そんな順番だ。ちなみに、こうした状態にオーナーが気づくと、広告を作っている管理会社や仲介会社は、「何やってんだ」と、当然叱られることになる。

とはいえ、自ら不動産ポータルサイトを覗き、自身の物件広告を確かめるオーナーというのは、実はとても少ない。

そのため、ひと月、ふた月、それ以上……と、無情にそのまま時間が流れていくというのも、これまた「あるある」な風景だ。

以上、物件を見ずに不動産ポータルサイト上の情報だけで賃貸住宅への入居を決めてしまう人がいまは結構いることを踏まえ、その判断のよりどころとなっているはずの「写真」について、いくつか話をしてみた。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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