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物件を見ずに部屋を決めるのはこれを読んでから――賃貸物件広告の「写真」についての大事な話(2/3ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/07/28

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その写真、10年以上も前のものでした

この行為は、「不動産の表示に関する公正競争規約」が定める不当表示にほぼ該当する。なので、本来やってはいけないことだ。それでも、以下に述べるような事情もあって、かなりの常識となっているので気を付けたい。

賃貸物件広告の写真には、「現状を撮ったものではない」ものが実は多いのだ。一体なぜだろう? 理由は簡単だ。それは、募集が始まるタイミングにある。

多くの場合、入居者募集は、現在住んでいる入居者が、管理会社などに退去を告げてから間もなく始まる。ところが、その時点では、現入居者はまだその部屋で生活中だ。当然、空室状態での部屋の撮影はしたくてもできない。

そこで、賃貸住宅オーナーや管理会社、仲介会社は、事前にストックしておいた写真を広告に使う。これらは、かつてその部屋が空室だったときに撮影されたものだ。

すると、入居希望者の立場としては、「えっ!」といった感じだが、これは現状、仕方のない流れというほかない。

よって、少なくないケースで、われわれが見る賃貸募集広告の写真は、実は、現入居者が住み始める直前か、さらにそれ以前のものだ。2年前のものかもしれないし、4年前のものかもしれない。

つまり、いま現在部屋の内部がどんな様子なのかについては、この場合、基本として写真では分からない。そのうえで、考えてみてほしい。

例えば、いま述べたパターンが募集のたびに、幾度も繰り返されていたとすればどうなるだろう?

加えて、いよいよ部屋が空いても、もう広告はこしらえたということで、新たな写真の撮影が行われない状態もそのたび続いたとしたらどうなるだろう?

そうなのだ。築5年、10年、さらにそれ以上と、長い時間が過ぎたあとでも、同じ写真―――ひょっとすると新築時のものが延々流用されているなど、実は結構ある。

そのため、写真で見たイメージのままで物件のドアを開けるや、現状との落差に唖然……!というのは、実際、仲介の仕事などをやっていると年に何度も経験する「あるある」だ。

しかも、そんな状態の物件となると、想像してほしいが、オーナーも管理会社・仲介会社も現時点での写真など、もはや撮る気がしなくなる。

いきおい、「今回もキレイな頃の写真を使っちゃえ!」……と、もちろん全てとは言わないが、それも少なからず実態だ。

次ページ ▶︎ | 写真は「切り取られて」いるものであることに注意 

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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