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不動産永遠のテーマ「賃貸vs購入」に決着?――帰属家賃を考える(2/3ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/06/24

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店子がよろこぶと大家が泣く

この考え方をベースにすると、賃貸と購入の論理がうまく分解され、分かりやすくなる。

例えば、家の水道が突然壊れ、水が出なくなったとする。店子である自分は「これでは暮らせない」と、大家である自分に文句を言う。大家である自分は「スミマセン」と言って、修理代を払い、水道を直す。

結果、店子である自分は水道が直り満足だが、大家である自分の方はというと、思わぬ出費にすっかり意気消沈だ。

家が地震に襲われた。その後、雨漏りが始まった。どこから漏れているのか、調べるだけでかなりの時間と費用がかかりそうだ。

そこで、通常の賃貸物件の店子ならば、「こりゃもう住めない。あきらめよう」で、そこを出ていくこともできる。これこそが、賃貸に住むことの何よりのメリットだ。

が、大家でもある店子の場合はそうはいかない。店子が家を失うことは、イコール、大家自身も家を失うことになる。

すなわち、その場から逃げたくとも逃げられない気の毒な店子である自分のために、大家である自分は、なんとしてでも、必死で雨漏りを直してやらなければならない。

つまり、よくいわれる家を持つことで失われる自由とは、ローンのために仕事をやめられなくなることではない(それは家賃も一緒だ)。

「移動の自由」あるいは「避難の自由」といった、賃貸物件の借主ならば、誰もが当然にもつ自由のことをいう。

ただし、これらの自由は、持ち家の所有者がもつ「自宅を好きなように改装できる自由」などとは、トレードオフの関係になっている。

ふざけた?店子も必死で保護

さらに、店子が35年の“家賃”を払い終えたとしよう。すると、大家も同時にローン完済となる。

そのうえで、店子の住居費は翌月から0円になるが、それでも店子は家を出ていかなくていい。

すなわち、これこそが家を買うことの最大のメリットだ。老後の安心の確保であり、よくいわれる「資産が残る」ということの具体的な効果にほかならない。

しかしながら、この場合でも、大家である自分は大家の責務からは逃れられない。

たとえ、「今後は一生家賃0円」の永久ボーナスに浮かれているふざけた(?)店子でも、大家は、彼を安心かつ安全に、そこに住まわせ続けてやらなければならない。

一方で、肝心の家の方は、その頃になればいよいよ老朽化してきたりもする。運が悪ければ、あちこち故障も出始める。

すると、大家は、やはりこれまでどおり必死でそれを直し続けることになる。そうしなければ、店子である自分自身がそこに住めなくなるからだ。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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